albert-ayler-my-name

Albert Ayler「Bye Bye Blackbird」「Summertime」(アルバム:My Name is Albert Ayler)

「ほとんどの人は無理と言いそうですが、はまる人には破壊力が半端ない曲」

今回はアルバート・アイラー「バイ・バイ・ブラックバード」「サマータイム」(Album『マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー』)をご紹介します。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:Albert Ayler
■アーティスト名カナ:アルバート・アイラー
■曲名:Bye Bye Blackbird、Summertime
■曲名邦題:バイ・バイ・ブラックバード、サマータイム
■アルバム名:My Name is Albert Ayler
■アルバム名邦題:マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー
■動画リンク:「Bye Bye Blackbird」「Summertime」

╂ 名曲レビューでは四つ星半以上のとびっきりの名曲だけをおすすめしています!╂

アルバート・アイラー「バイ・バイ・ブラックバード」「サマータイム」(アルバム:マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

今回ご紹介するのは、これまでご紹介した中で、最も耳にやさしくない音楽です。耳障りな音といってもいいぐらいです。

無理に聞く必要はありませんが、聞けるようであれば聞いていただきたいという音楽です。

この2曲は、はまれる人には大きな感動を与えてくれますが、おそらくそういう人は10人中で1人ぐらいでしょう。

多くの人にとっては、最後まで聞き通すのが苦痛きわまりない音楽だと思います。

それなのになぜおすすめするかというと、このブログは人生で最もお気に入りとなる曲を探していただく為のブログだからです。

その為には聞きやすくない曲でも、取り上げないといけない場合があります。

もちろん聞きやすい曲だからといって軽視するつもりはありません。

実際にこのブログでも聞きやすい名曲を数多く取り上げています。

今回はそれとは違うアプローチをしたいと思います。

時々は耳障りが良くなくても、その音楽のコアな魅力を、小細工なしで味わっていただいた方がいいのではないかと思っています。

まあ今回はいささかやりすぎの感もありますが。

ただ今回ご紹介する曲の品質には、相当自信を持っています。

確かに耳にやさしくないけれど、一旦気に入ってしまえば、一気に音楽の魅力の奥地まで到達することができる、ある意味近道みたいな曲だと思っています。

もし余力がある方は、時に異物感のあるこういう本当に凄みのある音楽を聞いて、自分がどう反応するのか確認してみるといいかもしれません。

他の人はアイラーのこのアルバムをどう紹介しているか調べてみた

こういう音楽を聞いていると、「本当にいいと思って聞いているんですか」と聞かれることがあります。

もし今そう聞かれたら「実際よく聞いてきたけど、今ではもうあまり聞いていない。もったいなすぎて、ここぞという時にしか聞けなくなった」と答えると思います。

今回久しぶりに聞くと、じっと静止して聞いてしまいます。全然BGMになりません。

私はこの音楽を他の方はどう紹介しているのだろうと思って、少し調べてみました。

アイラーは分かる人には分かると言いたくなるようなところがあります。

しかしそれでは少々不親切です。

調べてみると、やはり観念的な言い回しでおすすめしている人もいます。正直私も気持ちは分かります。

私も油断すると「折れた翼でなおも飛翔しようとするアイラーの咆哮」などと書いてしまいそうです。

でもそれでは伝わる気がしません。

そんな中で一つ興味深いブログの記事を見つけました。ある人がこのアルバムを友人に聞かせたところ、友人が涙を流したという話です。

引用しておきましょう。

ちなみに、いつだったか、音楽業界の友人を自宅に呼んで鍋をやった時、「え、聞いたことがないの?」と、いつも通りの即席DJで、いろんなものを聞かせながら、これもターンテーブルに載せたら、これで涙を流してしまった人がいた。

当然だ。これほど聞くものを圧倒する演奏が生まれることはないだろう…. と、言い切っても、間違いはない。

Smashing Mag

アイラーだったかうろおぼえですが、このあたりの音楽を評して「心臓をペンチでつままれたような音楽」と表現した人がいます。

たいへん適切な言い方だと思います。ただ言葉を変えると、心をわしづかみにする音楽だということですよね。

残念ながら、今回ご紹介する2曲は人を選んでしまうところがあります。

全員に気に入ってもらうのはほぼ不可能ですので、この音楽がリーチする人だけでも伝われば、それだけでうれしいです。

リーチする人とはどういう人のことでしょうか。

整合性のとれていない音楽に耐性がある人と、こういう激しい音楽が体質的に合っている人です。


アイラーを聞くのに向いていそうな人

これからこういう人はアイラーを聞いてみてほしいと思う人について書きます。

もちろん既に聞いている人も多いと思いますが、聞いていない人は今回ご紹介した曲から、ぜひチェックしてみてください。

まずプログレ好きの人にはおすすめしたいと思います。

なにせ日本のプログレ好きの人は耳の耐性については、世界でも最高レベルではないかと思うぐらいです。

たとえばプログレのアルバムで「緊密なインプロヴァイゼーション」みたいな言い回しがあります。

そういう言葉に惹かれるような人にはおすすめです。

もっと具体的にいうと、キング・クリムゾン(King Crimson)の「太陽と戦慄(Larks’ Tongues in Aspic)」の頃が好みの人は、気に入りそうな気がします。

その頃のクリムゾンはジャズっぽいところがありますし、即興演奏にも凄みがあります。

元々ロバート・フリップ(Robert Fripp)もフリージャズの影響を受けてきた人です。

この頃のライブでは、時にフリージャズみたいな展開になることがあります。

この時期の彼らとアイラーは、そう遠くありません。

次にポストパンクやニューウェーブが好きな人たちです。

例えば先日ご紹介したポップグループ(The Pop Group)などはその代表です。

ポップグループをチェックしていない方の為に、リンクを貼っておきましょう。

The Pop Group「She Is Beyond Good & Evil」(アルバム:Y)

ポストパンクの人たちは概してフリージャズの影響を受けています。

それを聞く人も音の整合性にこだわらず、自由なマインドで音楽を楽しめる人が多いと思います。

表面的な音の肌触りが尖っていても、気にせず音楽を聞けるという意味で、適性があるように思います。

最後にアメリカン・オルタナティヴ好きの人です。

代表格としては先日ご紹介したソニック・ユースなどです。

普段はロックっぽいフォーマットでやっていても、時々音楽のフォルムが崩してくると、フリージャズみたいになることがあります。

たとえばストゥージズ(The Stooges)の「ファン・ハウス」の「L.A.ブルース(L.A. Blues)」なんかは、フリージャズそのままです。

The Stooges「L.A. Blues」

他にも違う潜在的に高いポテンシャルを持った人たちが沢山いると思いますが、今私が思いつくのはこういう人たちです。

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

まず最初のイントロは遠くから聞こえてくるような録音になっています。

調子っぱずれのサックスが、なんだかボロボロの風情で破れかぶれな感じで吹いています。

この曲ではソプラノサックスらしいのですが、ソプラノサックスでもこんな濁った音を出せるのですね。

その一方でバックの音は、極めて普通のハードバップジャズです。

サックスの背後で鳴っているニルス・ブロンステッド(Niels Brosted)の端正なピアノのバッキングとの対比が、とてもいい味わいを出しています。

ベースも典型的なウォーキングベースで、演奏しているのは当時なんと15才の神童ニールス・ペデルセン(Niels Pedersen)です。

ベースソロでの弓弾きは若干退屈ですが、それ以外はピアノと共にアイラーをよく支えています。

ベースについては6:26からの数秒が一番の聞きどころです。

後のニールス・ペデルセンの飛躍を予感させる、たいへんすばらしいひらめきに満ちた演奏を聞かせてくれます。

このアルバムは現地デンマークのミュージシャンがバックを担当していますが、途方に暮れて自分にできる演奏をするしかないといった様子にも聞こえます。

アイラーについていけず完全なミスマッチな演奏となっているにも関わらず、中途半端にアイラーに寄せず彼らの文脈での良い演奏をしていることが、逆に効果的です。

アイラーは確かに激しい演奏です。

この時点ではフリーキーなトーンが多いだけで、後の本格的なフリージャズ時代に比べると、まだその一歩手前といった感じです。

エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の演奏にも感じることですが、感極まった激しいところと、無邪気さみたいなところが奇妙に同居しています。

一方もう1曲の「サマータイム」はこのアルバムの代表する曲だと言われています。

こちらはどちらかというと沈鬱なムードの曲です。

こちらではテナーサックスを用いていますが、決してきれいな音色ではありませんが、よりアイラーの肉声に近い音、つまり人間を感じさせてくれる音です。

先程の「バイ・バイ・ブラックバード」もそうですが、メロディの崩し方にセンスがあります。

さっきの曲にもいえることですが、乱調の美なんですよね。

一見過激に思える演奏の裏側にある一音一音のニューアンスの深さと繊細さが、とても印象的です。

もうどうしようもなくその瞬間だけに生きていて、その瞬間のありったけの思いを切り取って、その場限りの音楽として表現しています。

聞き込めば聞き込むほど、不思議と歌心あふれる演奏のように思えてきます。


曲のデータと経歴について

最後にデータについても触れておきましょう。

このアルバムは1963年にデンマークの「Debut」というレーベルから発売されています。録音もデンマークです。

録音は「ファースト・レコーディング(The First Recordings)」が先です。

しかし発売はこちらが先なので「マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー」がデビューアルバムということになります。

このアルバムの1曲目は、アイラーの自己紹介の音声が吹き込まれています。

8歳からサックスを吹くようになったとか、軍隊では親友ができて有意義だったとか、北欧はあこがれの場所だったとか、たわいないことばかり話しています。

ただ最後のところは「今は本当の自由を楽しんでいます。

いつの日か世間の歪みもなくなるでしょう」と締めくくられています。

その後に始まる2曲目が「バイ・バイ・ブラックバード」です。

「バイ・バイ・ブラックバード」は、ジャズでは多くの人にカバーされている有名な曲です。

一説によるとこの曲の歌詞は、黒人売春婦が足を洗って故郷に帰ることをテーマにした曲とも言われています。

先程の「いつの日か世間の歪みもなくなるでしょう」というセリフの次の曲ですから、いささかドキっとしますね。

また「バード」という言葉は、ジャズでは特別な意味を持っています。

「バード」と呼ばれたジャズの天才サックス奏者、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)です。

アイラーは幼少期、その優れた演奏力から「リトル・バード」と呼ばれていたそうです。

この当時アイラーはアメリカの保守的なミュージシャンから孤立して、お金をためて、このアルバムの前年の1962年にスウェーデンに移住しています。

「バイ・バイ・ブラックバード」の黒人売春婦が足を洗って故郷に帰るという意味の歌詞を考えると、この頃の彼は歌詞の内容を自分と置き換えていたのかもしれません。

きっと当時の保守的なジャズメンも、アイラーの音楽を肌に合わない過激な音楽だと思ったのでしょう。

私が考えるアイラーの音楽の良さ

アイラーの音楽を一言で表現すると、「感極まったエモーショナルな音楽」です。

エモーショナルすぎるから、その出口として自由な表現を求めようとするし、その自由さゆえに聞き手が面を食らうところは確かにあると思います。

この音楽が良いと思えなくても、ほとんどの人がそう思うでしょうから、気にする必要はありません。

単に自分には合わない音楽だったというだけです。

気が向いて聞いてみようと言う方だけで結構ですので、聞いてみていただければと思います。

もし聞き手がチューニングできさえすれば、心をわしづかみにされて、魂をまるごと揺さぶられてしまう、そういう種類の音楽だと思います。

引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。


マイ・ネイム・イズ 【HQCD】

albert-ayler-my-name
最新情報をチェックしよう!