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Antony & the Johnsons「Fistful of Love」(アルバム:I am a Bird Now)

「音楽と演劇の境界線を軽く飛び越え、心を鷲掴みにする稀代の傑作」

今回はアントニー&ザ・ジョンソンズ 「フィストフル・オブ・ラブ」(Album『アイ・アム・ア・バード・ナウ』)をご紹介します。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:Antony & the Johnsons
■アーティスト名カナ:アントニー&ザ・ジョンソンズ
■曲名:Fistful of Love
■曲名邦題:フィストフル・オブ・ラブ
■アルバム名:I am a Bird Now
■アルバム名邦題:アイ・アム・ア・バード・ナウ
■動画リンク:Antony & the Johnsons「Fistful of Love」

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アントニー&ザ・ジョンソンズ「フィストフル・オブ・ラブ」(アルバム:アイ・アム・ア・バード・ナウ)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

今回はアントニー&ザ・ジョンソンズを取り上げます。

伝わる人にしか伝わらない言い方で申し訳ありませんが、このアルバムをざっくり表現すると、ルー・リード(Lou Reed)の「ベルリン(Berlin)」をジミー・スコット(Jimmy Scott)が歌ったみたいなアルバムです。

ボーカルはジミー・スコットほど甲高い声ではありませんが、表現的に類似性があるような気がします。

このアルバムに参加しているのはルー・リード、ボーイ・ジョージ(Boy George)、ルーファス・ウェインライト(Rufus Wainwright)、デヴェンドラ・バンハート(Devendra Banhart)と才人ばかりですが、参加アーティストから少し音楽の傾向が伺えるかもしれません。

ボーカルのアントニーことアントニー・ヘガティ (Antony Hegarty) は両性具有の男性として知られています。

ただ私はLGBT的な観点をフォーカスするつもりはありません。

私はゲイの友人がいたこともありますが、他の友人となんら変わりありませんでした。

普通のことだと思います。

LGBT的な面を殊更に取り上げると、軽率にもそれだけで何か分かったつもりになってしまうのを自戒したいと思います。

アントニーはイギリス生まれですが、10歳でアメリカに移住してアメリカの大学を出ています。

ニューヨーク大学では実験演劇コースを専攻し、前衛的なパフォーマンス集団に所属していたこともあるようです。

その後バンドを結成し、デビュー後「クルト・ワイルの世界~星空に迷い込んだ男(Lost In The Stars: The Music Of Kurt Weill)」などのプロデュースで知られるハル・ウィルナー(Hal Willner)に認められ、その紹介でルー・リードのツアーに参加することになります。

最初にこの話を知った時、確かにこの音楽はハル・ウィルナーに見つけられるべき音楽だと思いました。

ハル・ウィルナーはロックとロック以外の音楽との間で自由に行き来できるような感覚の持ち主です。

だから彼のプロデュース作ではジャズの人がロックの曲をやったり、その逆があったりしますが、さもそれが普通のことのようにコーディネートされています。

ジャンル横断的感覚に優れた名プロデューサーだと思います。

今回ご紹介する音楽はロックとロック以外の境目、そして音楽と演劇の境目を越えるジャンル横断的音楽ですので、発見すべき人が発見した感があります。

ただこのアルバムのプロデュースはアノーニ(Anohni)という人ですが、これはアントニーのことなのでセルフプロデュースということになります。

デビュー作はそれほど売れませんでしたが、2005年のこのアルバムで一気にブレイクしています。

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

まずイントロはしっとりしたピアノから始まります。なによりも声ですね。まず声に圧倒されます。

これをボーカルと言ってもいいのか。どちらかと言えば音楽を伴ったセリフで訴えかけてくると言った方がいいかもしれません。

最初は弱々しく感じられますが、不思議と凛としていて、次第に力強くなってきます。

このボーカルのキャラの立ち具合がすばらしいです。胸に突き刺さるボーカルです。

前半のアレンジはボーカルに添える程度です。ボーカルを生かすことに徹していますが、中盤から力強いホーンがこの曲を次第に高揚させていきます。

以前ご紹介したジム・キャバルディ(Jim Capaldi)の曲と同じ、最初は地味に始まり後半はホーンを中心に盛り上がるパターンです。

こういう曲のパターンがお好みの方は、下の曲もチェックしてみてください。

Jim Capaldi「Eve」(アルバム:Oh How We Danced)

この曲の聞きどころは後半のゴスペル的な高揚感です。

5:27に何か叫んでいますが、ここが私としては一番の鳥肌ポイントです。

先ほどのアントニーには演劇の経歴があると書きましたが、この曲はとても演劇的な曲です。

音楽だけとは思えないところがあって、聞き終えた後にドラマティックな映画を見終わったような感慨があります。

映画のエンドロールにこの曲を使ったら、途中で席を立つ人がさぞかし少なくなるでしょう。

私には計り知れませんが、アントニーはマイノリティとしてこれまでの人生で様々な経験をしてきたのかもしれません。

自分の中だけでしまっておけなかった物語があふれ出ている感じがあります。

そのお裾分けをしてもらって、ただの普通の人である私をもその物語の中にいるような気分にさせてくれます。

ちなみにアルバムジャケットはトランスジェンダーの女優・歌手であるキャンディ・ダーリン(Candy Darling)の写真が使われています。

晩年の病に伏している写真です。

この時彼女は白血病に侵されていました。退廃的できらびやかな人生を送ってきた人の晩年を捉えた写真です。

ちなみにヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)の「キャンディ・セッズ(Candy Says)」という曲の「Candy」とはこの人のことです。

このジャケットのアルバムタイトルは「アイ・アム・ア・バード・ナウ」つまり「私は今、鳥よ」です。

病に伏していても、心は鳥のように自由にどこにでも飛んでいけるわとでも言いたいのでしょうか。

なんという物語性でしょうか。恐ろしくリアリティがある演劇と歌だと思います。

引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。


アイ・アム・ア・バード・ナウ

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