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Miles Davis 「I could Write a Book」 (アルバム:Relaxin')



今回はマイルス・デイビス「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」(Album『リラクシン』)をご紹介します。

伝説のマラソン・セッションでマイルスが磨き上げたミュート演奏を存分に聞かせてくれます!


本日の☆おすすめ
■アーティスト名:Miles Davis
■アーティスト名カナ:マイルス・デイビス
■曲名:I could Write a Book
■曲名邦題:アイ・クッド・ライト・ア・ブック
■アルバム名:Relaxin'
■アルバム名邦題:リラクシン
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■音楽ジャンル:ジャズ
■期待効果:楽しい気分になります

この曲を聞いてみたい!
Miles Davis「I could Write a Book」
曲名をクリックすると動画サイトで視聴できます★Click Song Title★

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マイルス・デイビス「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」Album『リラクシン』レビュー


今回は「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイビスを取り上げたいと思います。

このアルバムは有名なマラソン・セッション四部作の1つです。

当時のマイルス・デイビスはPrestigeからColumbia(今はCBS)にレーベル移籍しようとしていましたが、契約を消化する為にマイルスは4枚分のレコーディングを1956年5月11日と10月26日の2回に分けて収録し終えます。

それが「Cookin'」「Relaxin'」「Workin'」「Steamin'」の4枚です。

なんだか適当に付けられたようなアルバムタイトルのように思うかもしれませんが、この「in'」で終るのはマイルスが好んでいるアルバムの名付け方で、先行して発表した自信作「Walkin'」でも、この名付け方が使われています。

当時マイルスは「Bags Groove」「Miles Davis and the Modern Jazz Giants」というキラ星のようなアルバムを連発していました。

後に巨人と呼ばれる人が駆け上がっていく過程では、伝説的な出来事が起こる場合がありますが、マイルスの場合はこのマラソン・セッションがその1つです。

たった2日だけ、ほぼワンテイクで録音した4枚全てが名盤の誉れが高く、この頃のマイルスの想像力がいかに高まっていたことを示しています。

ちなみにこの4枚によって契約を終了されてしまったPrestigeは、この4枚のアルバムを未練がましく発売間隔をかなり置いて発表し、最後に発表された「Steamin'」は5年後の1961年5月の発売です。

あのモード演奏の大傑作「Kind of Blue」が1959年ですから、「Steamin'」が発表された頃にマイルスは、もうその場所に留まっていないよという状態です。



マラソン・セッションのどこがすごいのか


マラソン・セッションの特徴はいくつかあって、

・ジャズボーカルでよく取り上げられているスタンダードナンバーが多く取り上げられた
・マイルスが精緻なミュートの確固たるスタイルを確立した
・ジョン・コルトレーンが5ヶ月の間に驚きの進歩を遂げている
・曲の演奏だけでなく前後に会話などもカットされずに収録されていて、ライブ感覚がある

今回は特にミュート演奏について取り上げます。
まず以下に引用しておきます。

金管楽器の弱音器は、管の吹き口とは逆の端の、最も太くなっている、ベル(朝顔)と呼ばれる部分に、ベルから出てくる音を塞ぐようにして、ベルの中に押し込むような形で取り付けられる。主として金属で作られる。さまざまなものが作られ、音色によって使い分けられる。
弱音器 Wikipedia


ミュートとはあえて音を弱めるということなのですね。その時に音色も少し変質するのがポイントです。この曲ではイントロのピアノの後、最初に演奏されるトランペットの音がミュートの音です。

トランペットはブラスバンドで一番高音部を担当していることが多いと思います。目立つせいかどうか分かりませんが、ジャズプレイヤーでも人気が高い楽器です。

いわば激戦区なんですよね。それだけにすごいプレイヤーが沢山いて、特にファッツ・ナバロ、クリフォード・ブラウン、リー・モーガン等、ほとんと怪物といえる人たちが群雄割拠しています。

上に挙げた3人にウィントン・マルサリスを加えてもいいのですが、音そのものが豊かでファットで、音色にブリリアントな輝きがあります。

上記の人たちの演奏は、生まれながら強者のトランペットという感じがします。ボクサーで言えば、ヘビー級のハードパンチャー達です。

マイルスも演奏力ではすごいと思いますが、単純にトランペットという楽器を鳴らしきるという意味では、上記の人たちに比べると遅れをとっていると思います。

もちろんマイルスもすばらしい演奏だと思いますが、ハードパンチャー視点では彼らには適いません。

そこでマイルスが目指した方向は、私は以下の3つだと思います。

1.共演者を自分の音楽観の影響下に置いて、グループ全体で良い音楽を聞かせる
2.知的なコントロールの下で演奏し、情動に頼らない高いレベルを保つこと
3.自分の良さが生きる演奏スタイルを確立する

3つ目の今回マイルスが確立した演奏スタイルがミュート演奏です。このアルバムでマイルスは6曲中5曲でミュートで演奏しています。

ミュートとは弱音機と呼ばれる通り、音を弱くするというものです。つまりそのままの音をブリリアントに響かせるのと正反対のベクトルの演奏方法と言ってもいいと思います。

しかし一方で演奏が安定していないと音が露骨に不安定となる為、諸刃の剣みたいなところがあります。

メリットはメロディの輪郭がはっきりしたり、より繊細に表現しやすいということです。豪快に音を鳴らす演奏ばかりしている人は、集中力の持続が必要となるかもしれません。

つまり先に挙げた怪物的ともいえるトランペット奏者たちに対して、やせっぽちの帝王であるマイルスが手にした対等以上に戦う方法が、このミュート演奏です。

このミュートはマラソン・セッションではまだ小粋な歌もののメロディを際立たせるような使い方ですが、後にマイルスは更にを自らの武器としてのミュート演奏を研いでいき、ついには「死刑台のエレベーター」のサントラでは、カミソリのようなヒリヒリした切れ味を聞かせてくれます。



この曲のどこがすばらしいのか


さて演奏を聞いていきましょう。

まずはコロコロとよく転がるレッド・ガーランドのピアノから始まります。テーマはマイルスが1人で歌います。この時期のマイルスの演奏ははっきり言ってハズレがありません。

知的に演奏をコントロールしているように感じられる一方で、メロディをよく歌わせています。一般的に歌ものをミュートで演奏すると陳腐な演奏になりがちですが、ここでは適度な緊張と感情の込め方がとてもバランスいいと思います。

次にジョン・コルトレーンはとても大きな音で始まるので一瞬驚いてしまいますが、ここで注目していただきたいのは、バックのサポートです。

コルトレーンの演奏になった途端、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムを中心に、まるで応援するかのようにプッシュします。まあマイルスのバックで派手に演奏すると怒られるのかもしれません。

後にマイルスと並ぶジャズ界の2大巨頭のにまで上り詰めるジョン・コルトレーンは、後の演奏に比べるとやはり落ちると思います。しかし周囲の演奏が盛り立てていこうとしているせいで、大きな弱点になってはいません。

その後のレッド・ガーランドのピアノはやはりソロでもよく転がるピアノを弾いてくれます。ポール・チェンバースもきれいにベースラインを紡ぎだして、非常に心地よい演奏をしています。

そして最後にやはりフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムはやはりすばらしいです。私はこの人が時々ダン!とキメを入れるところが大好きです。

マイルスの小粋なミュート演奏がこじんまりした感じに聞こえないのは、フィリー・ジョーのこの推進力が大きいような気がします。

このアルバムでは「If I Were a Bell 」が有名ですが、どの演奏も同じぐらいすばらしいと思います。

先ほどマラソン・セッションでは演奏時の会話もレコードに記録されていると書きました。

このアルバムでは最後に誰かが「もう一回やろう」と言い出しますが、マイルスが「なぜだ?」と答え不穏な空気が流れる中、コルトレーンがビールを飲もうと「栓抜きはどこにあるの?」と言って、とぼけた味わいを出しているのが面白いです。

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