無人島の1枚を探すブログ Milt Jackson 「Moonray」 (アルバム:Milt Jackson Quartet)

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Milt Jackson 「Moonray」 (アルバム:Milt Jackson Quartet)



今回はミルト・ジャクソン「ムーンレイ」(Album『ミルト・ジャクソン・カルテット』)をご紹介します。

地味で小粋な演奏から匂い立つブルースフィーリング


本日のおすすめ!(Today's Selection)
■アーティスト名:Milt Jackson
■アーティスト名カナ:ミルト・ジャクソン
■曲名:Moonray
■曲名邦題:ムーンレイ
■アルバム名:Milt Jackson Quartet
■アルバム名邦題:ミルト・ジャクソン・カルテット
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■音楽ジャンル:ジャズ
■期待効果:リラックスできます

曲を聞いてみたい!(Click to Listen)
Milt Jackson「Moonray」
※Today's Desert Island Disc

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ミルト・ジャクソン「ムーンレイ」Album『ミルト・ジャクソン・カルテット』ディスクレビュー


グループ表現に収まりきらない演奏の魅力


こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールはこちら

今回はジャズ・ヴィブラフォンの曲を取り上げます。

ホーンやギターなどの上物は一切なしで、じっくりとヴィブラフォンを楽しむことができる曲です。

この人はMJQという略称で知られる、モダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet)というグループにも在籍していますが、自身のソロ活動も活発に行っています。

モダン・ジャズ・カルテットは、ジャズの認知度や地位を高めた、とても大きな功績のあるグループです。

唐突ですが、この人とモダン・ジャズ・カルテットの関係は、ブーツィ・コリンズ(Bootsy Collins)とパーラメント(Parliament)の関係に似ていると思います。

ブーツィ・コリンズ好きの人って、つくりものっぽいパーラメント的世界観での演奏に対して一定の評価をしつつも、本人のやりたいようにやっているソロ作品の方がいいと言っている人が多いですよね。

この人もモダン・ジャズ・カルテットでも、とてもすばらしい演奏を沢山残しているのにも関わらず、この人の良さをソロアルバムに見つけている人がとても多いと思います。

ブーツィもミルト・ジャクソンも、ジャンルや楽器や持ち味が異なっても、基本的に個人技に優れた演奏者です。

だからコンセプトとかグループ表現とかは、そんなもの要らないよと言いたい気持ちも分かる部分があります。

実際この人のジャズ・ヴィブラフォンにおける存在感は相当なもので、ヴィブラフォンはこう叩くんだというテンプレートをつくった感じがします。

この人が出てきてからヴィブラフォン奏者は、二者択一を迫られます。

彼の真似をして縮小再生産の音楽をやるか、あえて彼の示した範囲を外して違う面を打ち出すか、この人はその踏み絵を迫る存在です。

この人は名演が沢山あって、分かりやすいすごさを示す演奏が沢山あります。しかし今回ご紹介するのは、その中でもファンキーすぎない、こじんまりとしていて小粋な曲を取り上げました。

この人の演奏はテンションを上げなくても、滋味深いフィーリングに優れた演奏をします。

いやむしろテンションを上げない方が、自然なブルースフィーリングが際立つとさえ思います。

このアルバム自体がとても地味ですが、私はこのアルバムを偏愛しています。

このアルバムだけでも1曲に絞るのが大変でした。取り上げるか迷った外の曲のリンクも貼っておきましょう。

My Funny Valentine - Milt Jackson
Stonewall - Milt Jackson



経歴とモダン・ジャズ・カルテットについて


このアルバムは1955年に録音されたミルト・ジャクソンのリーダー作で、プレスティッジ(Prestige)レーベルから発売されています。

当時はモダン・ジャズ・カルテットでいえば「コンコルド(Concorde)」の頃で、あの名盤「ジャンゴ(Django)」発表の前年の作品といえばイメージしやすいかもしれません。

ミルト・ジャクソンは1923年生まれで、幼い頃から教会に通って、自然にゴスペルやファンキーな感覚を身につけていきました。

7歳でギターを始め、11歳でピアノを弾き始め、高校ではティンパニ、バイオリン、ドラムなど様々な楽器を経験した後、転機が訪れます。

ベニーグッドマン(Benny Goodman)楽団でのライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)のヴィブラフォン演奏を聞いて、彼はヴィブラフォンを始めます。この時16歳でした。

ギターなどと違って、ヴィブラフォンみたいな楽器はやろうと思っても身近にありません。

そうした意味で高校生の時であれば学校に行けばありますから、出会うタイミングもちょうど良かったと思います。

その後ミルト・ジャクソンは1945年にディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)のバンドに迎え入れられます。22歳頃です。

彼は1948年頃から自分のリーダー作を発表し、着実に評判を高めていく過程で、1950年二度目の転機を迎えます。

当時ケニー・クラーク(Kenny Clarke)などと一緒に演奏し始めますが、それが翌年1951年にはミルト・ジャクソン・カルテットという形に発展します。

それが後にモダン・ジャズ・カルテットとして発展する母体となるグループです。時系列で整理しましょう。

1951年 ミルト・ジャクソン・カルテット結成
1952年 モダン・ジャズ・カルテットと改名
1955年 ミルト・ジャクソンがソロ名義で「モダン・ジャズ・カルテット」というアルバムを発表

1952年の改名時には、バンド内の力関係にも変化が生じます。

当初のリーダーであるミルト・ジャクソンから、次第にジョン・ルイス(John Lewis)がグループの主導権が移行し始めます。それが現れたのがグループ名の変更だったというわけです。

グループは次第にクラシックの室内楽のような音楽性にシフトしていき、「コンコルド」の頃はその音楽性が完成の域に達していました。

グループが成功していく中で、ミルト・ジャクソンは息苦しい思いをしていたように思います。その頃「コンコルド」とほぼ同時期に録音されたのが、このアルバムです。

このアルバムでは精緻な「コンコルド」の演奏とは異なり、あまりアレンジされていない音楽が展開されています。

私はモダン・ジャズ・カルテットも大好きです。ジョン・ルイスの端正なピアノも好みですし、ミルト・ジャクソンの決定的名演はむしろグループの方が多いと思っています。

ミルト・ジャクソンのソロ作の方にも、過剰に肩入れするつもりはありません。

ただソロ作での演奏は、より気楽に聞ける良さがあると思います。

グループ内の立場や音楽性が変化する中で、ミルト・ジャクソンが息抜きをしている、そんな印象の演奏です。

一流シェフが客に出すフレンチ料理もいいけれど、まかない料理も絶品で、むしろそちらの方が好きかもしれないという感じです。



この曲のどこがすばらしいのか


さて曲を聞いていきましょう。

まず最初のヴィブラフォンの音から、リラックスしたブルースフィーリングにうなります。

この曲でミルト・ジャクソンの演奏は熱くなりすぎずに演奏しています。アドリブのいくらでも歌える感じが半端ないですね。

リリカルなテーマの背後では、ピアノのホレス・シルヴァー(Horace Silver)がジョン・ルイスに似た感じでバッキングしています。

このアルバムではジョン・ルイスよりも黒くファンキーなピアニスト、ホレス・シルヴァーが起用されているにもかかわらず、あまり黒い面を出して演奏していません。その頃はもっとコテコテな演奏をしていたはずです。

私はこのアルバムを聞くたび、いつも不思議だと思っていました。

曲の中盤からホレス・シルヴァーのアドリブが始まりますが、ここでもそれほどホレス・シルヴァーっぽい演奏ではありません。

おそらくここでのホレス・シルヴァーは、主役をを立てているのだと思います。ミルト・ジャクソンのつくり出す音楽世界に対して、きちんと沿った演奏をすることに集中していて、しかしその中できちんと味わい深い演奏をしています。

パーシー・ヒース(Percy Heath)のベースとコニー・ケイ(Connie Kay)のドラム演奏も、かすみ草的サポートをしています。

この曲では終わり方もはかなげな感じが出ていて、余韻が残ります。

この曲自体はモダン・ジャズ・カルテットで演奏される曲調と大差ない曲だと思います。ただよりくつろいで自然な形でブルースフィーリングを表に出している、その自然さが聞きどころだと思います。

ミルト・ジャクソンのヴィブラフォン演奏は、後から香るタイプの黒さがあります。

それは音の間合いの取り方であったり、メロディを歌い上げる時の音の紡ぎだし方とか、そういうところからにじみ出てくるところがあります。

そもそもヴィブラフォンの音は、本来黒さがありません。

音色が黒くないヴィブラフォンで、黒さとかブルース・フィーリングなどを出すには、演奏者の中によほどフィーリングが満ちていなければ不可能です。

その点この人はブルースフィーリングの塊ですから、自分の内側にあるその感覚を自然に発散させたいと思うのは、むしろ当然のことのように思います。

その自然さが隠し味となっていて、とてもリラックスさせることができる音楽になっています。地味なアルバムですが、じわじわと良さが沁みてくるアルバムです。

このアルバムは全部で31分ぐらいの長さです。

もし空き時間が30分ぐらいあって、リラックスしたい時にでも、聞いてみてはいかがでしょうか。

引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。


ミルト・ジャクソン・クァルテット




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