無人島の1枚を探すブログ Joao Gilberto 「Zingaro (Retrato Em Branco E Preto)」 (アルバム:Amoroso)

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Joao Gilberto 「Zingaro (Retrato Em Branco E Preto)」 (アルバム:Amoroso)



今回はジョアン・ジルベルト「白と黒のポートレイト」(Album『AMOROSO (イマージュの部屋)』)をご紹介します。

ボサノヴァとはこの奇妙な男の内面と身体感覚を通過して生まれた鬼っ子サンバであるという事実


本日の☆おすすめ
■アーティスト名:Joao Gilberto
■アーティスト名カナ:ジョアン・ジルベルト
■曲名:Zingaro (Retrato Em Branco E Preto)
■曲名邦題:白と黒のポートレイト
■アルバム名:AMOROSO (イマージュの部屋)
■アルバム名邦題:Amoroso
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■音楽ジャンル:ボサノヴァ
■期待効果:じんわりと感動します

この曲を聞いてみたい!
Joao Gilberto「Zingaro (Retrato Em Branco E Preto)」
曲名をクリックすると動画サイトで視聴できます★Click Song Title★

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ジョアン・ジルベルト「白と黒のポートレイト」Album『AMOROSO (イマージュの部屋)』レビュー


今回はジョアン・ジルベルトの1977年に発表されたアルバムからの曲をご紹介します。

この人は「ボサノヴァの神」とか「ボサノヴァの法王」などと呼ばれている人です。

ボサノヴァというジャンルの音楽の歴史は、1958年に「Chega de Saudade(想いあふれて)」というシングルが発売された時から始まったとされています。

確かにこの曲は作曲がアントニオ・カルロス・ジョビン、作詞がヴィニシウス・ジ・モライス、歌とギターがジョアン・ジルベルトという、以降ボサノヴァの歴史を背負う三巨人によって始められました。

ただ多くの人が厳密に言えばボサノヴァという音楽のジャンルはなく、ボサノヴァはサンバの一種であると言っていますが、私も同意見です。

サンバの一部の要素を抜き出して、新鮮なコードの感覚とギターの奏法が加えたのが、いわゆるボサノヴァだと思います。

そもそもジョアン・ジルベルト本人が、自分の音楽はサンバだと言っています。

おもしろいですよね。ボサノヴァの法王であり創始者と言われる人が、「私の音楽はボサノヴァではなく、サンバです」と言っているわけですから。

ただ先程のシングルはそれ以前のサンバと比べて、非常に感覚的ではありますが、はっきりした差異を感じる部分もあります。

私はその差異は曲や歌詞に由来するものはなく、ジョアン・ジルベルトがつくりだしたものだと思います。

私はボサノヴァという音楽の正体は、ジョアン・ジルベルトの内面と身体感覚を通した時に生まれた鬼っ子的サンバだと思っています。

この人は元々裕福な家庭に育ちましたが、子供の頃から少し変わった子だと言われていたそうです。

そんな彼が夢中になったのが音楽ですが、音楽にうつつを抜かすのを嫌った父親が、金銭的援助を止めてしまった為、彼は家を出て友達の家を渡り歩く生活をしていたそうです。

ただ当時の生活は荒れ果てていて、マリファナにも手を出して、すさんだ生活だったようです。

その後彼は姉の家に身を寄せ、居候生活をおくります。今でいうニートかひきこもりです。

彼はその居候宅でバスルームに立てこもり、ギターを弾き歌ってばかりいたそうです。その時に彼は自分のスタイルを確立したのです。

ちなみにこの人は変人とか奇人とか言われていますし、そうしたエピソードがあまりに多すぎます。音楽界には奇人変人と呼ばれる人が数多くいますが、彼はその中でも最高ランクの人です。

例えば有名なエピソードからいくと、彼は人と接するのを極度に避けていて、長年ホテル暮らしをしていましたが、毎日食事を受け取る時に少しだけドアを開けて受け取るとすぐに閉めて、それが唯一の外の世界との接触だったとか。

それにステージをすっぽかすことなどは日常茶飯事で、たとえステージに出てきても大観客で埋まっているステージの上で居眠りしたこともあったそうです。

ボサノヴァとは、風変りで破天荒な男が、ほんのひとときモラトリアムな時間を与えられた結果、アウトプットされた音楽なのですね。



この曲のどこがすばらしいのか


さて曲を聞いていきましょう。

まずやるせなく流麗なストリングスから始まります。

このアルバムはプロデュースはトミー・リピューマ、アレンジはクラウス・オガーマン、エンジニアはアル・シュミットという鉄壁の布陣です。

このトリオはA&Mレーベルの名作の数々や、ジョージ・ベンソンの「ブリージン」を担当した制作陣です。マイケル・フランクスの「スリーピングジプシ」など、ボッサテイストな作品も手掛けていますから、うってつけの人でしょう。

ここでも昔の昼下がりのドラマで使われそうなイントロを提供しています。彼はこのアレンジも気に入らなかったそうです。

有名なヒット作である「ゲッツ/ジルベルト」で録音の間ずっとスタン・ゲッツに悪態をついていたという有名エピソードもありますが、彼は基本的に他人の仕事が気に入らない人です。

その後ジョアンの歌が始まります。

この歌のどこがすごいかというと説明が苦しみますが、とにかく淡々と舌っ足らずの声で歌っています。

表面上のスタイルとしては軽みのある歌い方なのでしょうが、彼の歌はそれほど軽く感じません。

どこか自分の心の深淵をのぞき込んでいるような孤独感、ギリギリの淵で綱渡りをしているような緊張感、そしてそこはかとない諦念を感じさせる歌い方です。

ジョアン・ジルベルトの歌はニューアンスに優れていますが、この人の歌ほど音符に置き換えることが難しいボーカルは、たいへん珍しいと思います。

こんな舌っ足らずの歌が、世の中に数多ある表現力に卓越したボーカリストたちを凌駕しているのです。

私はそのボーカルの不思議な魅力には、彼のパーソナリティが関係していると思います。

超変人ですが、それは神経が繊細過ぎるゆえです。人からは奇妙に思えるふるまいも、彼にはそういう風にするしか他に選択肢がありませんでした。

このボーカルスタイルも、あえて舌っ足らずでぼそぼそ歌っているのではなく、これが彼ができる唯一の歌い方だったのです。

彼がぼそぼそとした歌で表現す世界は、唯一彼が生きられる世界で、歌うことはその唯一の世界と繋がるたった一つの方法です。

だから歌うことでかろうじて現世にしがみついていているような切迫感が、この曲に得も言われぬ凄みを加えています。

ボサノヴァは太陽の下で歯を見せて笑う陽キャラの音楽ではなかったのです。ある陰キャラ男の内面や身体感覚を通して生まれた音楽です。

もちろん小野リサをはじめとして、すばらしいボサノヴァをやっている人はたくさんいます。

しかし先日彼の訃報を聞いてこの記事を書こうとした時に、ボサノヴァの原点を自分の中で整理して、このブログでお伝えしたいと思いました。



ジョアン・ジルベルトの訃報を受けて


2019年7月7日、ジョアン・ジルベルトの訃報が飛び込んできました。私は彼の晩年を知りたいと思って、様々なニュースを読みました。

7月6日にお亡くなりになったようです。死因は不明だそうですが、享年88歳、ほどほどに長生きだったのは良かったです。

どうも晩年は40歳年下の最後の奥さんによって、ジョアン・ジルベルトは巨額の負債を抱えて、一人孤独に過ごしていたそうです。

お気の毒だとは思いますが、彼の場合は孤独はむしろ安心できたのではないかなと思ったりもします。

今回彼の訃報を受けて、そういえば最近アルバムを出してはいないかと思って、Amazonで検索してみました。

他でも調べてみましたが、やはり最近は発売していないようです。

ライブアルバムでもいいのですが、できればオリジナルアルバムを聞きたいと思っていました。オリジナルアルバムは2000年に発売された「ジョアン 声とギター(Joao Voz e Violao)」以来出ていません。

彼の場合は老齢で声量がなくても成立する音楽ですし、むしろ枯れた歌を聞いてみたいと思いました。

今回ご紹介したこの曲は枯れていて、しかしその枯れているゆえに味わいが格別です。

敬愛する中原仁さんのライナーノーツによると、カエターノ・ヴェローゾがこの曲を「私が最も影響を受け、最も敬愛する人、ジョアンの中でも最高の曲」と語っていたようです。

中原さんは、この曲についてジョアン・ジルベルトにしては珍しく声がうわずったりかすれたりしているが、それゆえに詩情を誘うと書いていますが、慧眼だと思います。

私はこの曲を聞くと一つ思い浮かぶイメージがあります。

それは映画「太陽がいっぱい」のラストシーンみたいなシーンです。破滅の一歩手前で、淡々と過ごす昼下がりみたいなイメージです。

繊細過ぎるゆえに頑固で、人を人とも思わないふるまいをすることもありました。しかしマイクの前だけでは、まるで天使のような歌を歌っていた男です。

この曲は奇妙な男による実在論的ボサノヴァです。ぜひご堪能ください。

引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。


AMOROSO(イマージュの部屋)




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