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Procol Harum 「A Rum Tale」 (アルバム:Grand Hotel)



今回はプロコル・ハルム「ラム・テール」(Album『グランド・ホテル』)をご紹介します。

紅茶が似合うロックには、英国ポップらしい毒が満載です!


本日のおすすめ!(Today's Selection)
■アーティスト名:Procol Harum
■アーティスト名カナ:プロコル・ハルム
■曲名:A Rum Tale
■曲名邦題:ラム・テール
■アルバム名:Grand Hotel
■アルバム名邦題:グランド・ホテル
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■音楽ジャンル:ロック
■期待効果:優雅な気分になります

曲を聞いてみたい!(Click to Listen)
Procol Harum「A Rum Tale」
※Today's Desert Island Disc

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プロコル・ハルム「ラム・テール」Album『グランド・ホテル』ディスクレビュー


キース・リード(Keith Reid)という不思議な存在


こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールはこちら

このバンドは「青い影(A Whiter Shade of Pale)」が有名すぎて、むしろ割を食っている感があります。

「イギリスのザ・バンド」と言われることもありますが、その言い方も部分的真実だと思いますが、誤解を招く表現かもしれません。

実際このアルバムなどは、ザ・バンドとはかなり音楽性が異なります。

今回ご紹介する曲を私なりに表現すると「紅茶が似合うロック」です。

ちょっと聞くと優雅で上品ですが、そこにはイギリス人ならではの、毒とひねくれた感覚がたっぷり詰め込まれています。

このアルバムは「フランス貴族階級の退廃と没落」というコンセプトのアルバムと言われています。

しかし一方でこのバンドの作詞担当のキース・リード(Keith Reid)によると、アルバム全体でそのコンセプトに従っているわけではないとのことです。

最初は彼らが表したかったのは、グランド・ホテルという貴族など上流階級が交錯する世界を、魅力的に表現したかったのかなと思っていました。

確かに音楽だけでいえば、そういう雰囲気を示したアルバムだと思います。

しかし歌詞を読んでから、その意見が変わりました。

このバンドはとても面白い構成になっています。キース・リードは作詞だけを提供していて、実際の演奏には参加していません。

キング・クリムゾン(King Crimson)におけるピート・シンフィールド(Pete Sinfield)的存在といえば、分かる方もいらっしゃるかもしれません。

こういう人はライブやレコーディングの時には何をしているのでしょうね。

ともあれキース・リードは、このアルバムで全曲の作詞を担当しています。

このアルバムはゲイリー・ブルッカーが書く優雅で上品なメロディに、キース・リードの書いたおもしろおかしい歌詞を楽しむアルバムです。

まずは一癖も二癖もある歌詞を検証することから、この奇妙な作品を読み解いていくことにしたいと思います。



歌詞から読み解くコンセプトの謎


先程申し上げたように、このアルバムは「コンセプトアルバムなのに、タイトル曲以外にそのコンセプトは関係ない」と言っているのですから、何が何だか分かりません。

ではそのタイトルソング「グランド・ホテル(Grand Hotel)」の歌詞を、出だしだけ翻訳してみましょう。

今夜私たちはシルクのシーツの上で寝ます
上質なワインを飲み 手に入りにくい希少な肉を食べます

Procol Harum ? Grand Hotel Lyrics | Genius Lyrics


ここまででいいでしょう。

最後までずっとこの調子で、自分たちの優雅な暮らしを見せびらかす言葉を並べ立てているだけですから。

そのやりすぎなアピールに、悪意すら感じるぐらいです。「こんなことを実際言う人がいたら嫌な奴だよね」とでも言いたいのかもしれません。

書いた本人が「フランス貴族階級の退廃と没落」というテーマはこの曲だけと言っていますが、実は他にもそれらしき歌詞をいくつも見つけることができます。

シングルカットされた「スーヴェニア・オブ・ロンドン(A Souvenir of London)」は、表向きはロンドン旅行でお土産を買ったという歌と説明されていますが、実際はイギリス旅行で性病をもらった男の話であることがバレバレで、英国BBCから放送禁止処分を受けています。

放送禁止になった時キース・リードは、そうじゃないああだこうだと言い訳をしていたそうです。なかなか中二病っぽい人かもしれません。

それで不評を買ったせいか、本国以外ではどの国でも過去最大のヒットになったのに、本国イギリスだけがチャート入りを逃すという不自然なチャートアクションになっています。

その流れで今回ご紹介した曲の歌詞もご紹介しましょう。この曲はキース・リードもお気に入りの曲のようです。

この曲はタイトルの「A Rum Tale」つまり「ラム酒物語」という意味です。

この曲では女にうつつを抜かしている貴族らしい男が、日々ラム酒を飲んでばかりいます。

抜粋して翻訳します。

私は原住民から身を隠し、ラム酒だけで生きている
私は回顧録を売るつもりです 今書いているやつをね
もし誰も買わないなら 町を焼き払ってしまおうかな

Procol Harum ? A Rum Tale Lyrics | Genius Lyrics


これもまた香ばしい歌詞ですね。ただ私は疑念が湧きました。

「フランス貴族階級の退廃と没落」というコンセプトでつくられているアルバムだけど、それを表す歌詞はタイトル曲だけですと言っているのは、カモフラージュではないかということです。

あまりにも自国をバカにしていると非難されるのを恐れて、予防線を張っているではないかと。

先のシングル曲でも、本人は性病の歌であることを巧妙に隠していたつもりだけど、実は全然バレてしまったように、後からこのアルバムの悪意をぼかかした方がいいかなと軌道修正しようとしたような気がします。

そう考えると「このアルバムはコンセプトアルバムだけど、その内容はタイトル曲だけ」という意味不明な説明も理解できます。



アルバムコンセプトは自虐なのかも


キース・リードがイギリスのどの階級出身か分かりませんでしたが、彼はロンドン生まれのユダヤ人で、10代の早い時期に学校を辞めて作曲に専念したんだそうです。

まだとても若い頃に作曲に専念したのですから、もちろん普通ではありません。

通常作曲で食べていくというのは大変なことです。既に実績があるならばいいのですが、まだ若いのならば実績もなかったでしょう。一応探しましたが見つかりませんでした。

キース・リードは幼少の頃からピアノを習っていたそうですから、少なくとも生活がカツカツな家の出身ではなかったと思います。キース・リードが比較的裕福な家の出身であったことは想像に難くありません。

つまり彼が皮肉って描いたような、暇を持て余して人生の深刻な面に向き合わずフラフラしている貴族に、彼自身が似た立場だったと思います。

貴族出身だったとしても、おそらく放蕩息子の部類だったと思います。

またこのバンドのメインソングライターであるゲイリー・ブルッカー(Gary Brooker)も、キース・リードと同じピアニストです。

彼らの絆は固く、このメンバーチェンジがとても多いバンドにあって、50年近くに渡ってソングライティングチームを組んでいました。よっぽど気が合ったのでしょう。

ちなみに後にドラマーのB.J.ウィルソン(B.J.Wilson)の健康が悪化した時に、バンドの再結成しり希望を持たせて生きる気力を奮い立たせようと、ゲイリー・ブルッカーが新曲のデモテープをB.J.ウィルソンに贈ったという逸話があります。

後に発売されたそのアルバムは「放蕩者達の絆(The Prodigal Stranger)」というタイトルです。

バンドの中で、「俺たちは放蕩者だ」という共通する意識があったことをうかがわせるエピソードです。

そういうバンドカラーから考えると、このアルバムのコンセプトは、少々自虐的な意味を含んでいるのかもしれません。



この曲のどこがすばらしいのか


曲を聞いていく前に、音楽面に重要な変化をもたらしたメンバーの変化について書きたいと思います。

先程このバンドは音楽性がつかみにくいという意味のことを書きました。

それはロックにとって重要な楽器であるギターの存在が、ピアノのゲイリー・ブルッカーと常に拮抗していて、時にはギターの主張が上回った時があったからです。

ジミ・ヘンドリックスに傾倒していたロビン・トロワー(Robin Trower)との間でも、かなりの音楽面での衝突もあったようです。

ロビン・トロワーの後任ギタリストであるデイヴ・ボール(Dave Ball)も、このアルバムの前にバンドを脱退し、代わりにミック・グラバム(Mick Grabham)が加入しています。

その間隙を縫って、ゲイリー・ブルッカーとキース・リードという2人のピアニストがバンドの主導権を握って発表したのが、このアルバムです。

この頃はもう初期のサウンドを彩っていたオルガンのマシュー・フィッシャー(Matthew Fisher)もいませんから、好きにできたのでしょう。

さて曲を聞いていきましょう。

まずイントロのピアノから気品が漂います。

ボーカルも泥くささを抑えていて、この小曲の逸品をふくよかに表現しています。

中盤からは「青い影」を思わせるような、バッハっぽいハモンドオルガンがひと盛り上がりをつくっています。

その後にワルツのステップを踏むようなピアノが戻ってきて、優雅に終わります。

ただこの曲の最後の言葉は「knobble me lame」となっています。翻訳が少々難しいのですが、「足が不自由になる」という意味です。

ただのお酒の飲みすぎでフラフラしているぐらいだったらいいのですが、歌詞を読んでいてドキっとしました。

よくアガサ・クリスティのエルキュール・ポアロとか、ミス・マープルものとかの英国推理ドラマで、上流階級の人たちが集まって紅茶を飲んでいるシーンがあります。

そこに集まっている人達は水面下で、疑念に駆られて本音を探り合ったり、殺人の話をしていたりします。

今回ご紹介する音楽は、少しそういうものに近いのかなという気がしました。

歌詞のスパイスが少し聞きすぎた件については、いかにもイギリスらしいと笑いとばしていただき、上品な音楽をお楽しみください。

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