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The Blow Monkeys
「Digging Your Scene」(アルバム:Animal Magic)

「不器用な超絶イケメンがAIDSに感染した友達のことを歌った名曲」

今回はブロウ・モンキーズ「ディギング・ユア・シーン」(Album『アニマル・マジック』)をご紹介します。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:The Blow Monkeys
■アーティスト名カナ:ブロウ・モンキーズ
■曲名:Digging Your Scene
■曲名邦題:ディギング・ユア・シーン
■アルバム名:Animal Magic
■アルバム名邦題:アニマル・マジック
■動画リンク:The Blow Monkeys「Digging Your Scene」

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ブロウ・モンキーズ「ディギング・ユア・シーン」(アルバム:アニマル・マジック)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

このグループは一般的に、ドクター・ロバート(Dr. Robert)のワンマンバンドとして認識されています。

実際に全ての曲を書き、ギターを弾き、フロントマンとしてボーカルをとっていますから、その通りだと思います。

当時はスタイル・カウンシルと同じ文脈で語られていたようですが、位置づけとしては弟バンドみたいな扱いだったそうです。

彼らは1984年に「リンピング・フォー・ア・ジェネレイション(Limping for a Generation)」でデビューし、1986年にこのセカンドアルバムを発表しています。

スタイル・カウンシルの翌年にデビューしていますし、音楽性も似ていますから、比較されるのもうなづけます。

ただ私の感想としては、どちらかというとブロウ・モンキーズの方が、黒人音楽の影響が色濃いバンドのように思います。

ブラック・ミュージックそのままのような曲も多いですが、加えて少し楽曲が地味な気がしました。

その一方でスタイル・カウンシルよりも、サウンドがキラキラしています。ちょっとバブルっぽいサウンドです。

そのキラキラ感は、ドクター・ロバートの容姿にとても合致していました。

ドクター・ロバートはジャケットを見ての通り、大変なイケメンで、モデルとして活動していても成功しそうです。

ただこの人はその外見を活かしきったかというと、そんな感じはしません。

ドクターロバートはレコードを3万枚所有しているソウルフリークとして有名です。つまりイケメンの中身は、音楽オタクだったのですね。

またその後の活動内容や、ソロになってからの音楽性からすると、あまり派手に目立つことを好まない人のようにすら感じます。


AIDS問題を扱った歌詞について

この曲はAIDSに感染した友人について歌った曲として有名です。

ドクター・ロバート自身はゲイではありませんが、若い頃によく通っていた黒人音楽をかけるクラブで、多くのゲイの友達ができたそうです。

しかし当時は、ゲイに多いAIDSという病の脅威がさかんに喧伝されていました。

この曲は次のように始まっています。

今 君からのメッセージを受け取った
君がいなくなるなんてとても悲しいよ

(この気持ちをどうしたらいいんだろう)
(息を飲み それから不安定な状態に置かれた)

つまり君は神の復讐を受けるということか

The Blow Monkeys – Digging Your Scene Lyrics | Genius Lyrics

「神の復讐」というのは、当時の保守的な人々が、ゲイの人を非難する時に使っていた言葉のようです。

彼らは君を埋めてしまおうと 家に留めておこうとする
しかしそんなのは 生きているとはいえないと思うよ

(僕は大人ばかりの中で 子供みたいだ)
(僕は永遠の友達でありたい)

もう一度過去の自分を振り返って考えてみたいんだ

The Blow Monkeys – Digging Your Scene Lyrics | Genius Lyrics

念のため申し上げると、AIDSは血液を介するか、性行為によってしか感染しません。

握手をしたりトイレを貸しても、感染はしないと言われています。

ただ当時の風潮の中では、遊びに来たり会いに来たりしたら困る、どうにかして排除したいという存在だったようです。

この曲の最後で主人公は「うちにおいでよ」と歌っています。

当時のAIDSに対する風潮

当時はイギリスに限らず世界的に、AIDSへの恐怖が強い風潮にありました。

今でこそいろいろ分かっていることが多いので、こういう場合は大丈夫と言えるでしょう。

しかし分からないことが多かった当時は、AIDSの友人を受け入れるというのは、リスクのある結論だったかもしれません。

イギリスで最初にAIDSの感染が認められたのは1981年で、検査薬が開発されるのは、1985年まで待たなければいけませんでした。

このアルバムは1986年に発表されています。つまり検査薬ができた翌年です。

AIDSの治療薬は1995年に開発されるまで、不治の病の代表格みたいに言われていました。

時系列で整理してみましょう。

1981年 イギリスで初のAIDS症例が報告
1985年 検査薬が発売
1986年 このアルバムが発売
1995年 AIDS治療薬が発売

この曲の主人公の友達は、開発されたばかりの検査薬でAIDSが見つかったけれど、この時はまだ治療薬が開発されていないので、死を待つばかりだったかもしれません。

検査薬が開発されてから治療薬が発売されるまでの期間は、大変だったでしょうね。

LGBTやポリティカルコレクトの風潮が強い今では考えられませんが、この頃は敬虔なキリスト教徒が多いイギリスでは、AIDSについて強い偏見がありました。

神の摂理に反しているみたいな意見が多かったようです。この曲の歌詞でも「神の復讐」とありますが、そうした時代背景によるものです。

おそらくドクター・ロバートは、その風潮に一言もの申したかったのでしょう。

しかしこの種のナイーヴさを持っている人が、ドクター・ロバートという人なのかなという気もします。

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

イントロからドクター・ロバート自身によるギターカッティングが冴えています。

その後サウンドのもう1人のキーマンであるネヴィル・ヘンリー(Neville Henry)のサックスが始まります。

ネヴィル・ヘンリーというサックス奏者はとても泥臭い音色を持っていて、決してこぎれいな演奏をする人ではないと思います。

にごりを出しすぎるので、スムース・ジャズなどを演奏しそうな人ではありません。

どこかしらガトー・バルビエリ(Gato Barbieri)にも似た、むせかえるような濃厚な演奏をする人だと思います。

おそらくバンドの主導権を握るドクター・ロバートの好みなんでしょう。

うちには洗練されたおしゃれなサックスは必要ないんだよみたいな音楽オタク的なこだわりなんでしょうか。

30秒ぐらいのところから始まるコーラスも黒人音楽の影響を受けた感じで、とても気分が高揚します。

ボーカルは決してうまいとは思いませんが、不思議と味わい深いです。

時々こぶしを回すように歌うところなどを聞くと、本当にソウルミュージックが好きなのだなと思わされます。

また今回ご紹介するために聞きなおしたところ、ベースラインがとてもすばらしいことに気が付きました。

アルバム単位でいうと、この曲以外はそれほど曲がキャッチーがありません。

とにかくキャッチーな曲満載だったスタイル・カウンシルとは、そこが大きく異なるかもしれません。

全体の印象としては地味な曲を、こってりとした味付けをしているような曲が多いように思います。

ただ不思議と味わい深い曲が並んでいます。

後にドクター・ロバートはソロになってからも、更に地味な曲ばかり歌うようになります。

こんなに華やかな外見を持って生まれたのに、それを活かしきらなかった感じが半端ありません。

ドクター・ロバートという人は、ビジネス上としては、あまり器用な人ではなかった気もします。

ただ才能はある人でした。

不器用な超絶イケメンが、奇跡的に外見と一致させることに成功したこの曲を、ぜひ聞いてみていただければと思います。

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Animal Magic ~ Deluxe Edition (from UK)

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