「無骨で男くさいロックを聞きたい人におすすめします!」
今回はボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド「イーヴン・ナウ」「月に吠える」(Album『ザ・ディスタンス』)をご紹介します。
╂ 本日のおすすめ!(Today’s Selection) ╂
■アーティスト名:Bob Seger & the Silver Bullet Band
■アーティスト名カナ:ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド
■曲名:Even Now、Shame on the Moon
■曲名邦題:イーヴン・ナウ、月に吠える
■アルバム名:The Distance
■アルバム名邦題:ザ・ディスタンス
■動画リンク:「Even Now」「Shame on the Moon」
╂ 名曲レビューでは四つ星半以上のとびっきりの名曲だけをおすすめしています!╂
ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド「イーヴン・ナウ」「月に吠える」(アルバム:ザ・ディスタンス)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
この人ほど日本とアメリカの知名度の差が大きい人は珍しいと思います。
日本ではこの人のウィキペディアがないという悲しい扱いですが、英語のウィキペディアでは、かなりのボリュームでこの人について書かれています。
実際にトータルで7,500万枚を超えるレコード・CDセールスを記録していますし、Rock & Roll Hall of Fameにも選ばれています。
まあ余裕の選出でしょう。本国では賞のプレゼンターを務めるようなレジェンドです。
その彼の全盛期のヒット曲がこの2曲です。
どちらもシングルカットされて「イーヴン・ナウ」は12位、「月に吠える」は2位まで昇っています。
日本でもう少し知られてもいいと思い、今回取り上げることにしました。
きっとこの人は日本では名前ぐらいは知っているけれど、曲はよく知られていないという存在でしょうから。
この人は名曲が多いのでとても迷いましたが、典型的なロックナンバーとスローの曲を各1曲ずつ取り上げてみました。
経歴について
この人の略歴に触れておきましょう。
ボブ・シーガーはデトロイト出身で、かなり早い段階からローカルヒーロー的な存在だったようです。
デトロイトといえばミッチ・ライダー(Mitch Ryder)とかテッド・ニュージェント(Ted Nugent)とか男くさいロックミュージシャンを輩出するところです。
きっとそういう人が受け入れられやすい土壌があるのでしょう。
その後1969年には「Bob Seger System」名義で全国ヒットを飛ばしています。
よく比較されるブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)のデビューが1973年ですから、ボブ・シーガーの方が4年早いということになります。
日本では1976年の「ナイト・ムーブス(Night Moves)」あたりから一部で注目されてきたようですが、本国ではもっと早い段階で知られていました。
出すアルバムがヒットするのが当たり前の存在となっていた1982年に、このアルバムが発売されています。
このアルバムもビルボードで5位まで駆け上り、200万枚近くのセールスを記録しています。
アルバムタイトルの「The Distance」とは距離のことです。
どういう意味だろうと思ったら、当時ボブ・シーガーはウディ・アレン(Woody Allen)の「アニー・ホール(Annie Hall)」という映画に影響を受けて、人間関係について色々考えていたことが背景にあるようです。
この曲のどこがすばらしいのか
さて曲を聞いていきましょう。
まず「イーヴン・ナウ」はいかにもアメリカンロックという感じの曲です。
よく音楽好きの人がブリティッシュロックっぽいとか、アメリカンロックっぽいという時があります。
もちろんその人によって感覚は違うのでしょうが、この曲などは誰もがアメリカンロックと表現するのではないでしょうか。
一言で表現するとカラっとしていて、適度な重量感があって、少し大味なところもあるが、ひねっていないシンプルな楽曲。全然一言ではなくなりましたね。
まず力強いイントロから始まります。ピアノが跳ねているのがいい感じです。
ボーカルは少し渋いというか、ハスキーな声ですね。
この人のボーカルは色気がありませんが、いかにも一本気で無骨な男の声です。
ボーカルの背後では伴走するかのようにピアノが絡んできますが、こういうピアノの使い方はブルース・スプリングスティーンなどでも見られます。
アメリカのロックンローラーはピアノの使い方がうまいと思います。
センチメンタルで疾走感があって小気味良いピアノです。
ピアノだけではありません。他のバンドのメンバーも難しいことはできないが、これだけはできるといった感じの潔さを感じる骨太な演奏です。
サビのコーラスとの掛け合いもキャッチです。ライブで聞いたらきっと軽く昇天してしまうことでしょう。
ボーカルは後半叫びまくっていますが、暑苦しいでしょうか。いえいえこれでいいんです。
一方次の「月に吠える」はスローの曲です。
この曲は自作ではなくロドニー・クローウェル(Rodney Crowell)というカントリーシンガーの曲をカバーしています。
イントロからアコースティックギターがいい感じでリズムを刻んでいます。
もう少し音を軽快にすると、ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)のボーカルが始まってもおかしくない始まり方です。
こちらも小細工なしで歌っています。力まかせに歌うだけではない、肩の力が抜けた歌い方をしています。
間奏の詩情豊かなピアノもいい感じですね。
私がこのブログでおすすめしている曲は、単に私が好きな曲をご紹介しているだけで、それ以外に不純物となる要素を入れたくないと思っています。
この曲を紹介したらうけるだろうとは考えないようにしてます。そもそもそういうことを考えると気分がノリません。
ただ時々紹介しておかなければという感じの使命感を感じることがあります。
もちろん本当に好きな曲でなければ取り上げるはずもありませんが、今回ご紹介したボブ・シーガーもそんな感じで取り上げています。
極東の片隅で音楽を聞いている私にそういう風に思わせるのも、この人の堂々たるたたずまいゆえかもしれません。
アルバムジャケットだって売れ線を狙っている感じがありません。
彼の全盛期はMTV時代と重なっていますが、ミュージックビデオの時代に迎合しようとした形跡もありません。
当時の軽薄なものが良しとされる風潮の中にあっても、無骨で重厚感のある彼の存在は異質だったと思います。
男気ロックとでも呼ばせてもらいましょう。
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