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Chris Rea「On the Beach」「Giverny」(アルバム:On the Beach)

「背伸びをしたい若者と酸いも甘いもかみ分けた大人に聞いてほしい成熟した逸品」

今回はクリス・レアを取り上げます。

当時の彼はヨーロッパでは、積極的なプロモーションが行われず、干され気味に近い状態でした。

その逆境を彼は地力で乗り越えました。

このアルバムは、彼が地道な活動によって人気を高めていく過程をとらえたアルバムです。

一方でこの人は日本では、このアルバムが大人気となりました。

日本では、しっかり売っていこうという確かな販売戦略がありました。

決して大スターとは言えないこの人を、取り上げた日本側の動きは賞賛に値すると思います。

今回は日本とヨーロッパのプロモーション戦略の違いに着目して書きました。

その根本には、音楽そのものの力があります。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)

■アーティスト名:Chris Rea
■アーティスト名カナ:クリス・レア
■曲名:On the Beach、Giverny
■曲名邦題:オン・ザ・ビーチ、ジブニー
■アルバム名:On the Beach
■アルバム名邦題:オン・ザ・ビーチ
■動画リンク:「On the Beach」「Giverny」

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クリス・レア「オン・ザ・ビーチ」「ジブニー」(アルバム:オン・ザ・ビーチ)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

この人はヨーロッパでは、スタジアムを埋めるぐらいのスーパースターだそうです。

私からすると、スタジアムが似合わない音楽性と言ったら失礼ですが、そもそもそういう目立つ存在であることが信じられません。

ヒットしたアルバムを聞いても、時々スタジアム映えしそうな曲もありますが、なぜこんなに渋くて地味なアルバムが売れるのだろうかと思います。

昔この人の人気ぶりについて触れている記事を読んだことがありますが、幅広い年齢層に人気と書いてありました。

そういう言い方をしている場合ほとんどは、ファンの年齢層が高めと言っていることが多いと思います。

きっと若者のファンもいるでしょうが、彼の音楽の性質上、少し年齢層が高めかもしれません。

日本でもこの人のファンは、中年以降の人が中心だと思います。

ただ日本での人気は、他の国と少し異なるかもしれません。

それと日本のファンは、ヨーロッパのファンと違って、このアルバムでクリス・レアを知った人が多いと思います。

日本ではこのアルバムがダントツの人気です。

しかしこの人が現在の人気を獲得していく流れを追いかけると、人気が高まる過程の中の1枚といった位置づけにすぎないことがわかります。

日本みたいにこのアルバムばかりが取り上げられることはありません。

今回はこの人が日本とヨーロッパでどのように受け入れられてきたか、その違いがおもしろいので、それについて書いてみたいと思います。

 

日本では広告戦略で人気に火が点いた

日本ではこのCMで人気に火が点いたようです。

MAZDA “urban tuned” ETUDE 15″ 1987

ちなみにCMだけだとよく分かりませんが、この曲がCMで使われたマツダ・エチュードは、若者向けとして発売された自動車のようです。

「エチュード」というのは「練習曲」という意味です。

仲間と海に遊びに行って青春を謳歌する為に、手始めにまずはこの車からいかがでしょうかという感じだったみたいですね。

エチュードはハッチバックタイプの車ですから、車の後ろにいろいろ積んで海に行こうよとアピールしていたのですね。

このCMのおかげで、日本でのクリス・レアの認知度が高まりました。

ただ残念ながらマツダ・エチュードは、あまり売れなかったそうです。

歴代のマツダの車の中で、3本の指に入る不人気車と言っている人もいました。

ちなみに私が持っているCDの帯には、こんなぽえむのようなキャッチフレーズが書かれています。

「海辺にたたずむ彼の胸をあの渚の思い出がジブラルタルの風とともに流れていく……」

しかしこの人はこういう売り方でもしないと、なかなか日本で人気が出なかったであろうことは想像に難くありません。

このアルバムが発売された1986年当時の大人は、日本では演歌を聞く人が中心でした。

そもそもこういう落ち着いたタイプの洋楽を聞く層がいませんでした。

そこで若者にターゲットを絞って売り込んだと思われます。

あまりにも日本的なクリス・レアの売り方だったかもしれませんが、私は工夫して売り込んでくれたことに、とても感謝したい気持ちです。



ヨーロッパでの人気は口コミによるものだった

思えばこの人は昔から筋金入りで、とても地味な音楽をやる人でした。

この人は音楽にとてもこだわりがある人で、無理やりスターシステムに乗せようとしていたレコード会社との間で方針が合わず、しばらく冷や飯を食わされていました。

デビュー作が売れたのでその後もアルバムを出すことはできました。

しかしアルバムの制作コストを回収しようとするレコード会社との間で、しばらくの間ゴタゴタが続きました。

もちろん制作費に不満を持つレコード会社は、彼に大きな広告費を投入することはなかったでしょう。

そこでクリス・レアはその方針を受け入れていたマネージャーを変えて、ツアーに出ることにしました。

その後冷や飯を食わされていたはずが、なんだかよく分からないままヨーロッパ各国で売れ始めてきました。

このアルバムもその登りつめる過程のチャートアクションは、以下のようなものです。

■全英アルバムチャート
ウォーター・サイン(Water Sign) 64位
ワイヤード・トゥ・ザ・ムーン(Wired to the Moon) 35位
シャムロック・ダイアリーズ(Shamrock Diaries) 15位
オン・ザ・ビーチ(On the Beach) 11位
ダンシング・ウィズ・ストレンジャー(Dancing with Strangers) 2位
ロード・トゥ・ヘル(The Road to Hell) 1位
オーベルジュ(Auberge) 1位
ゴッズ・グレイト・バナナ・スキン(God’s Great Banana Skin) 4位

ではこのスターダムに駆け上がることができたのはレコード会社のおかげかというと、そうではありませんでした。

彼はレコード会社とのゴタゴタの中でツアーに出ました。

そのツアーは3年にも及び、後に彼自身が過酷だったと振り返るようなものでした。

日本のウィキペディアではそのあたりの経緯が書かれていませんが、彼の人気の高まりは、その時に口コミで広まってたものです。

日本のウィキペディアで、そういうところを匂わせている記述は以下のところだけでした。

シングルが発売されずプロモーションも大々的でなかったにかかわらず、1998年にリリースされたアルバム『ブルー・カフェ』は全英チャート10位に入った。

ウィキペディア クリス・レア

彼の人気は、広告費を投入したイメージ戦略によってではなく、音楽の良さを地道に訴えたことによる草の根的なものです。

 

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

まず「オン・ザ・ビーチ」のイントロは、波の音が入っています。

その後始まるエコーがかったギターのシンプルなフレーズとともに、まるでシーズンオフの海辺にいるかのような気分を盛り上げてくれます。

そこに絡むマックス・ミドルトン(Max Middleton)のフェンダーローズがとても心地よいです。

中盤で一瞬ソロ演奏となるところや、後半でも活躍していて、この曲の演奏面でMVP的な働きをしています。

そしてこの人の魅力は、とにかくボーカルです。

ハスキーですが低音に特徴があって、大人の色気を感じさせてくれるボーカルです。ダンディなこと、この上ありません。

そして彼自身によるギターは、あまり語りすぎないマーク・ノップラー(Mark Knopfler)みたいな持ち味を持った演奏です。

もう1曲の「ジブニー」は更に渋い曲調です。ただこちらは、特にサビが秀逸です。

こちらでもワビサビを感じさせてくれる音数が極端に少ないギターと、キーボードが曲をうっすらと味付けています。

しかしその味わいは格別です。

この人の音楽の特徴は、いぶし銀でブルージーなコクの深さです。

それをベースに、そこはかとないペーソスを加えています。

とても長く付き合えそうな魅力があって、年月の風化に耐えられそうな音楽です。

クリス・レアはこのアルバムの時点で35歳です。

デビュー時からどことなく若年寄りみたいなところがありましたが、このアルバムあたりで、ようやく音楽と彼の年齢が一致し始めてきました。

このアルバムの後に彼はキャリアのピークを迎えます。

この後の彼は、年齢を重ねることでより深みを増し、音楽に説得力が出てきたような気がします。

この人の音楽の良さが本当に分かるのは、35歳ぐらいからかもしれません。

背伸びしたい若者、酸いも甘いも噛み分けた大人にこそ聞いていただきたい音楽です。

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オン・ザ・ビーチ(デラックス・エディション)

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