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Dr. John「Mama Roux」(アルバム:Gris-Gris)

「ブードゥーなどのキワモノイメージの背後にニューオリンズ愛を隠した粋な男」

今回はドクター・ジョン「ママ・ロックス」(Album『グリ・グリ』)をご紹介します。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:Dr. John
■アーティスト名カナ:ドクター・ジョン
■曲名:Mama Roux
■曲名邦題:ママ・ロックス
■アルバム名:Gris-Gris
■アルバム名邦題:グリ・グリ
■動画リンク:Dr. John「Mama Roux」

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ドクター・ジョン「ママ・ロックス」(アルバム:グリ・グリ)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

2019年6月6日、ドクター・ジョンが心臓発作でお亡くなりになりました。享年77歳です。

このアルバムでは「Dr.John, the Night Tripper」が正式名義です。

本名はマルコム・ジョン・レベナック(Malcolm John Rebennack Jr.)という名前です。

「ドクター・ジョン」という名前は、彼の地元ニューオーリンズで実在していたブードゥー教の司祭の名前です。

この人はよく「ガンボ(Gumbo)」とか「イン・ザ・ライト・プレイス(In the Right Place)」だ代表作と言われていて、確かにどちらも傑作です。

ただ私が今回追悼しようと思って真っ先に思いついたのは、1967年に発表されたこのデビューアルバムでした。

「Gris-Gris」というアルバム名は、ブードゥー教の儀式で使用される杖のことだそうです。

今回はこのアルバムからご紹介します。

ブードゥー色が強いアルバムを制作した背景

このアルバムはよくサイケデリックでブードゥー色が強いと言われます。

おどろおどろしいキワモノ扱いで取り上げられていることが多いですが、私は本当はこの人は粋な人なんだと言っておきたいと思います。

もちろんヘンテコで理解不能な曲も多いですが、今ではそのバッドでアウトな感覚も一周回って新しい感覚で聞けるように思います。

ベック(Beck)の「メロウ・ゴールド(Mellow Gold)」みたいな、どこかヒップな感覚を感じます。

奇妙な曲が多い中で、この曲はひと息つける曲です。

ただ怪しげな曲が続く流れの中でこそ、この曲の良さが際立ってくるようにも思います。

ちなみにブードゥー教の演出やキャラ設定は、元々友人であるロニー・バロン(Ronnie Barron)の売り出し用にドクター・ジョンが考えていたものです。

彼自身はプロデューサーなど裏方として活躍する予定でした。

しかしその計画が頓挫してしまった為、キャラ設定をそのまま引き継いで時分でデビューしたという経緯があります。

ただこの人は元々ソニー&シェール(Sonny&Cher)やモンキーズ(The Monkees)など、洗練されて小ぎれいな売れっ子のバックで演奏していた人です。

なぜこんな怪しさ満載のアルバムでデビューすることにしたのか、いぶかる人もいるかもしれません。

そこには当時の時代背景があります。

有名な殺人事件を起こしたロックミュージシャン、チャールズ・マンソン(Charles Manson)が「Lie」というアルバムを出したのも、同じ1967年でした。

当時「Lie」はカルト的人気を博していましたが、その音楽もサイケデリックで民族音楽色などを取り入れたバッドテイスト満載のアルバムでした。

その風潮はイギリスにも渡り、翌年1968年にはローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)が「悪魔を憐れむ歌(Sympathy For The Devil)」というシングルを発表したり、ブラック・サバス(Black Sabbath)が黒魔術っぽいイメージでデビューしています。

日本でさえも1971年にブルース・クリエイションが「悪魔と11人の子供達」というアルバムを発表しています。

今では考えられませんが、当時の欧米では異端的で悪魔的なことが、若者の間でかっこいいものとして思われている風潮があったようです。

もちろんそうした作品を発表したり、デビュー時のキャラ設定にすることは、レコード会社の許可なくして実現しません。

レコード会社でもそうした演出がマーケティング的にいけるという判断もあったのではないかと思います。

このアルバムも発売当初は売れなかったようですが、イメージ戦略が功を奏したせいかロングセラーとなりました。

ついにはローリング・ストーン誌のオールタイム・グレイテスト・アルバム500ランキング(2003年版)では143位を獲得しています。

ドクター・ジョンの場合は、名前やサウンドにはブードゥー教のイメージを取り入れる一方で、服装はマルディ・グラ・インディアンと呼ばれる、ネイティブ・アメリカンが儀礼で着る衣装を取り入れました。

こんな感じの衣装です。

Mardigras

とてもきれいな衣装ですね。

ただマルディ・グラ・インディアンがブードゥー教を信仰していたかというとそうでもないようです。

ただどちらもマイノリティとして社会的に弱い立場でした。少なからず異端視されていたようですから、それを逆手にとったキャラ設定でデビューしたという訳です。

ちなみに後年、衣装はスーツ姿などダンディなものが多くなりました。

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

作曲は彼とジェシー・ヒル(Jessie Hill)という「Ooh Poo Pah Doo」というヒット曲で知られるニューオーリンズのR&B歌手の共作です。

アルバム全体としてはサイケデリックな摩訶不思議なサウンドが多いですが、この曲は普通のロック、というよりサイケデリックポップといえる曲です。

とはいえ出だしのリズムから少しおかしいです。

土着的なドラム演奏に重ねているのはキーボードなんでしょうか。少しクセになるリズムです。

ボーカルはレオン・ラッセル(Leon Russell)に似た声をしています。

肩の力が抜けた歌を披露してくれています。キワモノっぽい演出をしていても、どこかセンスの良さや粋なところがにじみ出る人です。

時々入る「ママ・ルー」というコーラスがキャッチーな色合いを加えています。

「ルー」の部分にあたる「Roux」という言葉、はフランス語で「赤」という言葉です。

元々ニューオリンズはフランスの植民地だった名残で、フランス語っぽい言い回しが残っている土地です。

彼は自分の生まれ育ったニューオリンズという街をとても愛していた男です。

このアルバムの後もニューオリンズの古い音楽を積極的に取り上げていて「ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ(Goin’ Back to New Orleans)」というタイトルのアルバムまで出しています。

彼がこのアルバムで表現したかったのは、ブードゥー信仰に基づく音楽、マルディ・グラ・インディアンの華麗な衣装、植民地時代の名残を残すフランス語の語感、そういったニューオリンズの古い伝統文化だったと思います。

それを商業ベースで成立させる為に、イメージ戦略を練って成功させた。

しかしふとした瞬間に、本来の資質である粋でダンディなところが垣間見えてしまった。それがこの曲です。

ただ全体としては異端色が満載で人を選ぶアルバムです。

家族と同居している人はこのアルバムを通して聞いていると、心配されてしまうかもしれません。

またジャケットも人目に付くところには置かない方がいいかもしれません。

誤解をされないように気を付けた上で、怪しげな曲の合間で浮かび上がる、この粋な曲を楽しんで頂ければと思います。

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Gris-Gris

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