「マル・ウォルドロンの綱渡りのようなピアノがスリリングな傑作!」
今回はエリック・ドルフィー「ビー・バンプ」(Album『アット・ザ・ファイヴ・スポット Vol.1』)をご紹介します。
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■アーティスト名:Eric Dolphy
■アーティスト名カナ:エリック・ドルフィー
■曲名:Bee Vamp
■曲名邦題:ビー・バンプ
■アルバム名:Live! at the Five Spot, Vol. 1
■アルバム名邦題:アット・ザ・ファイヴ・スポット Vol.1
■動画リンク:Eric Dolphy「Bee Vamp」
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エリック・ドルフィー「ビー・バンプ」(アルバム:アット・ザ・ファイヴ・スポット Vol.1)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
私が好きなジャズ・ミュージシャンを選んだらエリック・ドルフィーは3本の指に入りそうな人です。
今回ご紹介する曲は長いです。12分を超えています。
ただこの曲で注目してほしいのは、バス・クラリネットを吹いているドルフィーではありません。
もう1人の主役であるブッカー・リトル(Booker Little)でもありません。
どちらもすごい演奏をしていると思いますが、今回はピアノのマル・ウォルドロン(Mal Waldron)に注目していきたいと思います。
この人は普段このグループでは影が薄い存在です。
あまりにも上記2人がぶちぎれた演奏をしているので、中には存在感が薄い演奏もあります。
本来この人はあまり目立つ人でもありません。
有名な「レフト・アローン(Left Alone)」という曲もありますが、自分の代表曲でさえ、主役をジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)に持っていかれています。
このアルバムはライブですが、ピアノの調律が合っていません。
ピアノの音自体も安っぽいというか、トイピアノみたいであまり良い鳴り方をしていません。
しかしそんな悪条件すらこの演奏を引きたてているとすら感じさせるスリリングな演奏です。
この人は元々あまりバリバリ弾く人ではありませんが、この曲ではがんばっています。
テンション高めの演奏です。
ただテンション高めの演奏を弾き通すには本来バド・パウエル(Bud Powell)みたいな圧倒的なクリエイティビティが必要です。
私はこの人をバド・パウエルと同じぐらい好きですが、そういう人ではありません。本来は味わいの人です。
さてこの曲ではどうでしょうか。7分10秒ぐらいからピアノソロが始まります。
珍しく疾走しているように弾いたかと思ったら、時々少しフレーズを探すかのように逡巡しているようなところがあります。
そしてまた疾走するということを繰り返しています。
サーカスの綱渡りで時々立ち止まってフラフラしていたと思ったら、急に走りだすみたいなスリルがあります。
駆け上がっていく感じが爽快で、そこを聞いて頂きたいと思います。
最後はまるで駅伝の選手がバトンを渡し終わって倒れこむように終っているかのようです。
それからテーマに戻る前のつなぎでベースが浮かび上がるところもスリルがありますね。
エリック・ドルフィーとブッカー・リトルという怪物2人に囲まれて、負けていなかったぞと思います。
家で聞いていても拍手を送りたくなります。
スリリングな演奏を聞きたいと思う人にはおすすめしたいと思います。
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