「成功を夢見る人すべてに聞いていただきたい情熱がほとばしる野心的な音楽」
この曲は同名のサウンドトラックから選曲しました。
成功を夢見て一生懸命邁進する人にとって、元気が出る曲かもしれません。
アメリカのショービジネスの世界はとても厳しく、一握りの人しか成功することができません。
その中に入ろうとする者は、並大抵ではない情熱を持っていなければいけません。
この曲は夢を追いかけている若者の情熱をテーマにしています。
本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:Irene Cara
■アーティスト名カナ:アイリーン・キャラ
■曲名:Fame
■曲名邦題:フェーム
■アルバム名:曲名と同じ
■アルバム名邦題:曲名邦題と同じ
■動画リンク:Irene Cara「Fame」
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アイリーン・キャラ「フェーム」(アルバム:フェーム)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
アイリーン・キャラといえば「フラッシュダン(Flashdance)」ではないかと思う人もいると思います。
もちろん私も大好きですが、今回はこちらの方を取り上げることにしました。
しかしアイリーン・キャラは、いい仕事をしていますね。
この曲はバックが強く主張していてアクの強い演奏ですが、彼女は一歩も引かず歌っています。
芯の通ったタフな女性の歌です。
この曲は映画のテーマ曲としてヒットしました。アカデミー賞歌曲賞を受賞しています。
アラン・パーカー監督によるこの映画は、大きな評判を呼びました。
2009年にはリメイク映画もつくられています。それだけこの映画のテーマが普遍的だということでしょう。
この映画はブロードウェイでのスターになることを夢見て奮闘している、若者たちの軌跡を追った青春映画です。
青春群像という感じの作品です。
時代は多様なバックグラウンドを持った女性のサクセスストーリーを求めていた
この映画の頃はショービジネスの世界を舞台にした、サクセスストーリーが一種の流行でした。
この後には同じアイリーン・キャラが主題歌を担当した「フラッシュダンス(Flashdance)」が続きます。
その映画も主人公の女性はダンサーとしての成功を夢見ています。
また日本ではテリー・デサリオ(Teri DeSario)が、ブロードウェイで成功を夢見る若者達の映像をバックに歌った「オーバーナイト・サクセス(Overnight Success)」という曲が話題になりました。
フラッシュダンスの主演をつとめたジェニファー・ビールス(Jennifer Beals)は、アフリカ系アメリカ人の父親とアイルランド系アメリカ人の母親という出自です。
テリー・デサリオはイタリア系アメリカ人です。
アイリーン・キャラはニューヨーク・ブロンクス出身で、プエルトリコ系の父親とキューバ系の母親から生まれています。
元々彼女はこの映画で、ココというダンサー志望者役としての出演予定でした。
しかし彼女の歌を聞いた製作者は、驚いて主題歌のシンガーに抜擢したそうです。
その実話そのものがまるで映画みたいです。
この頃は多様なバックグラウンドを持った女性が悩みながらも成長し、ついには名声を手に入れる物語が求められていたのかもしれません。
あるオタク少年の野望
この映画では、あるシーンがとても印象的でした。
あるオタク少年が、誰にも知られず一人で、人を驚かせるような未来の音楽をつくろうとしていました。
しかしある日彼の父親が勝手その音楽を持ち出して、タクシーの上につけたスピーカーで、大音量で流すというシーンがありました。
すると音楽に熱狂した学生達が、道路を占拠して踊り狂うのです。
その時に流れていたのが、この曲です。
とても迫力があるシーンで、私が見たのはかなり昔でしたが、今でもよく覚えています。
つまりこの映画はダンサーたちだけでなく、このオタク少年の成功物語でもあるのです。
しかしこの映画に登場する人は、誰もかれもが夢見る若者ばかりです。
この音楽のどこがすばらしいか
先程申し上げたように、この曲は未来の音楽というふれこみでした。
ただ正直それほど未来感はありません。
むしろ既に聞いたことがある感じすらします。
ドナ・サマー(Donna Summer)の「ホット・スタッフ(Hot Stuff)」あたりを思い出す人もいるかもしれません。
ちなみに「ホット・スタッフ」のヒットが1979年で、この曲は1980年にリリースされています。
ただこの曲には野心的な部分もあって、特にイントロで流れるシンセサイザーが印象的です。
こういう無機質な音の使い方は、ジャーマン・プログレが基礎研究をしてきた、新しい音の使い方でした。
この当時メジャーな音楽シーンでは、確かに未来的な印象を与えたと思います。
あとこの曲で私が一番聞きどころだと思うのは、ベースラインです。
ヘッドホンで聞くと、ベースがかなりうねりすぎで、やりすぎな感じすらします。
ただその過剰さが、大きな魅力になっています。
2:49ぐらいから始まる暑苦しいギターと併せて、若者たちの情熱をよく表現していると思います。
もし現在夢を追いかけている人がいたら、この曲をなるべく大きな音で聞いた方がいいかもしれません。
よりハングリーな気持ちを目覚めさせてくれる曲だと思います。