「無敵のジャネットがセクシュアリティと精神性を強く打ち出した時期の傑作」
今回はジャネット・ジャクソン「それが愛というものだから」「スウィート・ドリームス」(Album『ジャネット』)をご紹介します。
╂ 本日のおすすめ!(Today’s Selection) ╂
■アーティスト名:Janet Jackson
■アーティスト名カナ:ジャネット・ジャクソン
■曲名:That’s the Way Love Goes、Sweet Dreams
■曲名邦題:それが愛というものだから、スウィート・ドリームス
■アルバム名:Janet
■アルバム名邦題:ジャネット
■動画リンク:「That’s the Way Love Goes」「Sweet Dreams」
╂ 名曲レビューでは四つ星半以上のとびっきりの名曲だけをおすすめしています!╂
ジャネット・ジャクソン「それが愛というものだから」「スウィート・ドリームス」(アルバム:ジャネット)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
今回はジャネット・ジャクソンを取り上げます。
この人は名盤名曲が多すぎるのですが、私はこのあたりからはまり出しました。
私がはじめて買ったジャネットのアルバムはこれでした。
とにかくヒットした「That’s The Way Love Goes」が気に入ったのです。
ただこの人の場合、聞こうと思わなくても街中で流れていましたから、いやでも聞かざるを得ませでした。
このアルバムもリリースした当時からかなり売れていました。
1986年の「コントロール(Control)」、1989年の「リズム・ネイション 1814(Rhythm Nation 1814)」を経て、アーティストの格も急激に上がってきている感じがしました。
安室奈美恵さんもこの人の影響を受けて歌とダンスを始めたそうです。
当初は女優志望で芝居の稽古などもしていたが、スクール内で観たジャネット・ジャクソンの楽曲「Rhythm Nation」のミュージック・ビデオに衝撃を受けて以来、歌とダンスに没頭する
この頃のジャネットにはパワーがありましたし、もうマイケルジャクソンの妹という紹介も必要なくなってきていました。
それ以前の私は、ロックを追いかけるだけで相当のリソースを費やしていたので、流行りもののR&Bを追いかける余裕がありませんでした。
かっこいいなとは思っていましたが、そのうち聞けばいいやと思っていました。
しかしこの曲あたりから、今ここで聞いておかなければと感じるようになりました。
当時の私はまだパンクが至高の音楽だという考えを引きずっている時でしたので、流行りものの音楽にはまるというのはカッコ悪い気がしていました。
まあ、正直でなかったのですね。
流行りの音楽はたしかにどうでもいいものもありますが、その中には必ず本物の音楽もあります。
そういう本物の時代の音楽は、例えば当時の友達とのたわいない会話とか、このアルバムを聞いて遊びに行った時の楽しい思い出とか、そういうものを含めてまるごと味わった方がいいと思います。
私も彼女の華やかな存在を感じながら、同じ時代の空気を吸うことができて良かったと思います。
おそらく古株の安室奈美恵さんのファンなら、こういう気持ちが分かっていただけると思います。
このアルバムからセクシュアリティをアピールし始めた
以前のジャネットは、ダンスとキレのある尖ったサウンドのイメージがありました。
このアルバムにはロックっぽい曲もありますし、多様性も確保されていますが、以前よりスローな曲が増えてきました。
プロデュースは引き続きジャム&ルイス(Jam & Lewis)が続投していますが、もうそろそろ違う面を打ち出そうという戦略もあったのかもしれません。
1993年にこのアルバムが発売された日、彼女は27歳と2日になっていました。
私がこのアルバムに感じるのは、精神性とセクシュアリティです。特にジャケットなどでも、明らかに露出が大きくなってきていました。
このアルバムのリミックスアルバム「JANET.REMIXED」のジャケットからして、こんな感じです。
ちなみに昔クロスビートだったと思いますが、ある女子高生がブラック・クロウズ(The Black Crowes)の「アモリカ(Amorica)」をレジに持って行くのが恥ずかしかったという話があって、大笑いした記憶があります。
こんなジャケットです。
確かに女子高生が買うのは、相当ハードルが高いですよね。
ただ私も気持ちがよく分かります。男の私も恥ずかしかったですからね。
私も先程のジャネットのアルバムを買った時、相当恥ずかしい思いをしました。
ちなみに先程のジャネットのジャケットの手は、うろ覚えですが旦那さんの手らしいので、ご安心ください。
歌詞から伺えるエロ路線の真意
このアルバムのエロさは歌詞にも表れています。たとえばこんな歌詞があります。
あなたの心の中で遊ぶ時間を私にください
そうしたら何度でもそこにたどり着ける
目を閉じて そして何も身に着けていない私の姿を想像してみて
あせらずに 私たちには一晩という時間があるから
ここから先はきわどすぎるので、翻訳を自粛したいと思います。
ただ彼女のエロアピールは、ある種の精神性も含んでいるように思います。
今回ご紹介した「それが愛というものだから」の歌詞を翻訳しておきましょう。
火に飛び込む蛾のように
燃えてしまった
この恋は盲目よ(中略)あなたが気持ちよくなってくれたら、私は泣くでしょう
私はあなたをそこに連れていきます
それが愛というものだからJanet Jackson – That’s the Way Love Goes Lyrics | Genius Lyrics
他の歌詞も読んで思ったのは、彼女が表現したいのはビッチ的なエロさではなく、むしろ男性に対しての忠実な愛情表現としてのセクシュアリティだと思います。
このアルバムで彼女が提示しているのは、そうした精神性とセクシュアリティが不可分に結びついている世界のように思いました。
一人の大人の女性としてのアイデンティティには、当然セクシュアルなものも含まれているし、なぜそれを隠さなければいけないのという感じがします。
このアルバムで彼女は、安全なセックスの必要性も訴えています。
私がこの健全な身体と心を駆使して、あなたをより良い世界に連れていくよという、健康的で前向きなメッセージ性もあります。
その導かれた長い列の最後尾には、まだ若かった頃の私もいたというわけです。
この曲のどこがすばらしいのか
さて曲を聞いていきましょう。
「それが愛というものだから」はチルアウトな名曲ですね。
イントロのギターからして最高です。男女の語りとコーラスが続き、1:13ぐらいでようやくジャネットのボーカルが始まります。
コクのあるリズムとギターがスローミディアムなテンポの曲によくなじんで、彼女の歌を支えています。
この曲は彼女のボーカルの比重はそれほど大きくありません。歌を聞かせる曲ではなく、彼女の世界を味わってもらう曲という感じです。
自分が歌わなくても、その世界の中心に彼女の存在を感じさせるという、表現者として一段上に進んだ感じがあります。
この曲は以下の3曲がサンプリング元です。個々の曲との関連については割愛したいと思いますが、比較して聞くととても興味深いです。
お時間のある人だけどうぞ。
James Brown – Papa Don’t Take No Mess
B.T. Express – If It Don’t Turn You On
The Honey Drippers – Impeach The President
もう1曲の「スウィート・ドリームス」も、歌が始まるまでが長くてじらしています。
こちらも会話から始まります。シュープリームスみたいなポップな曲です。
内容は彼氏や上司から電話がかかってきても、今、女友達だけで楽しくやっているから行けないわという曲です。
そのあっけらかんとした感じも、普段着のジャネットの魅力です。まあ全然許してくれるでしょう。
私はこの曲の自然と笑えてくるような前向きな感じが大好きで、アルバムには他にも名曲ぞろいにもかかわらず、この曲ばかりリピートして聞いていたりしていました。
ちなみに彼女は、このアルバムからヴァージン・レコード(Virgin Records)に移籍しています。
彼女の契約をとる為、各レコード会社の競争は熾烈を極め、結局契約するには40億円という当時としては最高額が必要となりました。
彼女と契約した時、ヴァージン・レコードのリチャード・ブランソン会長は、彼女をレンブラントの絵に例えて、もしレンブラントの絵が市場に出たら、たとえ高額でも買おうとする人がいるだろう。だから私は決心したのだ、というようなことを言っていたそうです。
しかしこのアルバムは全世界で1400万枚とも2000万枚ともいわれる枚数を売り上げて、彼女は自分にその価値があることを証明しました。
今回ご紹介した2曲を聞くと、当時の彼女の無敵な感じが伝わってこないでしょうか。
引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。