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Kenny Dorham
「Lotus Blossom」(アルバム:Quiet Kenny)

「朴訥さの中に必死に伝えようという気持ちがうかがえる名演」

今回はケニー・ドーハム「蓮の花」(Album『静かなるケニー』)をご紹介します。

本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名カナ:ケニー・ドーハム
■曲名:Lotus Blossom
■曲名邦題:蓮の花
■アルバム名:Quiet Kenny
■アルバム名邦題:静かなるケニー
■動画リンク:Kenny Dorham「Lotus Blossom」

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ケニー・ドーハム「蓮の花」(アルバム:静かなるケニー)ディスクレビュー

こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ

今回はジャズの名盤から取り上げます。

私はこのブログでジャズの楽しさもお伝えしたいと思っていますので、これからも時々ジャズの曲を織り交ぜていくつもりです。

できるだけ敷居を低くしたいので、当面はマニアックな曲は控えて、分かりやすい名曲を中心に取り上げようと思っています。

名演の中には神がかっている演奏もたくさんありますが、今回ご紹介するのは隣のお兄さん的名演です。

ケニー・ドーハムはトランぺット奏者です。

トランペットという楽器はブラス・セクションでも一番の高音部分を担っている為、特に音が目立ちます。

生演奏だと更にそう感じます。

私はこのブログで時々ベースがすごいすごいと連呼していますが、たとえベースが音を外したとしても、ほとんど誰にも気づかれなかったりします。

しかしトランペットが何かしでかすと悲惨です。

派手に転んだ人みたいなもので、誰もがそれに気づいてしまいます。

ただその分活躍したら目立つし、いい演奏だったと褒められることも多い、毀誉褒貶が激しい楽器です。

そのせいかサッカーで目立つフォワードに才能が集まりやすいように、トランペットは天才肌の人や実力者が集まりやすいと思います。

なぜケニー・ドーハムの良さは分かりにくいのか

その中でケニー・ドーハムはトランペットの人であっても、例外といえる人かもしれません。

この人は本国アメリカでの評価が高くないとか、バイプレイヤー的な存在として扱われることも多い人です。

確かにそういう扱いに頷けてしまう部分もあります。

考えてみたら、この人は際立った特徴があまりない人です。

技術的にすごい訳でもなく、アドリブに切れ味があるとか、想像力にあふれる演奏をする訳でもありません。

高音を派手にヒットさせたり、バリバリ吹いて圧倒できる人でもありません。

彼の演奏は中音域でのコントロールが効いた抑制された良さがあります。

ただアート・ファーマー(Art Farmer)のような大人っぽい落ち着いた感じにならず、どことなく頼りない感じがします。

確かに時々動の部分を見せることはあっても、ぶち切れた演奏ではあまりありません。

うまく他のプレイヤーに合わせて曲の雰囲気に合った演奏をしようしている感じがあります。

少し多めの人数の友達で飲んだ時に、少しテンションが高めの雰囲気になると、普段控えめな友人も空気を読んでテンションが高めになりますよね。

そういう感じがします。

エズモンド・エドワーズ(Esmond Edwards)によるジャケット写真を見ても、いい人そうな感じがしないでしょうか。

私の知らないこの人の演奏を聞かせられて誰の演奏と聞かれても、私は当てる自信がありません。

もちろんこの人なりの個性はあるのですが、それは彼の演奏だと強く刻印を押すような類のものではないからです。

実際にこの曲のアドリブでも、不器用な人が足がもつれそうになりがら走っているような、少したどたどしい演奏だと感じられます。

さてこういう押しが弱くたどたどしくて流麗さに欠ける感じを、彼の個性とか演奏のすばらしさと言ってもいいものかと、私は考え込んでしまっています。

例えばある友人を表現するのに、空気が読めるし控えめでいい人だよねと言ったとしたら、あまり筋の良い誉め方ではないと感じられるのと同じです。

とまあ、あまり褒めていない感じのことを書きましたが、それにもかかわらずこの曲を、私は大絶賛したいと思います。

例えばこの曲の最初でトランペットが入ってテーマを吹いているところを聞いて頂きたいと思います。

音の抜けがいいとは言い難いですが、それなのに不思議と美しいと思える音色です。

まずはその音の美しさに注目すると、彼の良さが分かってくるかもしれません。

彼の演奏にはどこかもたついたようなところがあります。

しかしその一方で特にこの演奏などでは顕著ですが、まるで口数が多くない無骨な俳優が一生懸命にセリフを話しているかのような、じんわりとした感動を与えてくれます。

曲を聞いていく前に、データについて触れておきましょう。

このアルバムは1959年にニュー・ジャズ(New Jazz)というレーベルから発売された、ケニー・ドーハムのリーダ作です。

アルバムとしてはバラードなどの落ち着いた演奏が多いので、「静かなるケニー」というタイトルが付けられています。

この曲はケニー・ドーハム自身が作曲した曲で、ジャズスタンダードしても有名な曲です。

「蓮の花」という邦題通り、東洋のイメージを曲にしたようです。

この曲のどこがすばらしいのか

さて曲を聞いていきましょう。

イントロはドラムとベースがが不穏な雰囲気をつくるところはいつも「チュニジアの夜(A Night in Tunisia)」っぽいなと思います。

この何か始まりそうだと期待感を高める演出がいいですね。

その空気を切り裂く、しかしどこか頼りなげなトランペットの音、これがケニー・ドーハムの真骨頂です。

最初の1音から音が美しいなと思います。

美しくリリカルなテーマのメロディが終わると、そのままアドリブに移行しますが、ここでも彼は絶好調です。

ただ54秒ぐらいのところなんかはたどたどしくて、大丈夫かと心配になります。

しかし問題ありません。本日のケニー・ドーハムは絶好調で、次第にメラメラと燃え上がってきます。

安定して高水準の演奏をキープしてソロを終えます。

その後入るトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノがまた秀逸です。

まずピアノソロの出だしが最高すぎですかね。音が飛び跳ねています。

出すぎず控えめすぎず曲に合わせた演奏ができることに関して、おそらくこの人以上の人はいません。

ここでも曲にぴったりの、少しセンチメンタルで情熱的なピアノソロを披露してくれています。

ベースのポール・チェンバース(Paul Chambers)はいつも通りきれいなベースラインをキープしていますが、過不足ないという範囲に留まっています。

この曲のポイントの1つはアート・テイラー(Art Taylor )のドラムです。

この人は本来ケニー・ドーハムと同じ脇役系の人で、堅実な演奏をする人です。

しかしこの曲ではまるでマイルス・デイビスのバンドのフィリー・ジョー・ジョーンズみたいな少し前のめりの派手な演奏をしています。

曲のキメのところで、ダンと鳴らすところをもう少し強くしたら、よりフィリージョー色が上がったと思います。

単にリズムをキープするだけでなく、他のメンバーを鼓舞するドラムだと思います。まるでどんどん攻めろとチームにカツを入れる、ゴールキーパーみたいです。


日本での評価が高い理由

このアルバムは日本での評価が高いアルバムです。

そもそもケニー・ドーハムは、本国ではあまり知られていないようです。

ジョン・ゾーン(John Zorn)が自分のアルバムでケニー・ドーハムの曲を取り上げたところ、本国アメリカでは全然知っている人がいないのに、日本ではとても有名で驚いたという逸話を読んだことがあります。

私が日本人の1人として思うのは、普段あまり強い個性を主張しない人ばかり人ばかりが集まっているにも関わらず、これだけは伝えておきたいという必死さみたいなものが、ふと垣間見える瞬間があるせいかもしれないと思ったりもします。

その一途な一片の心が、私だけでなく判官びいきの日本人の琴線に触れてしまったのかもしれません。

ジャズというのは天才や個性の強い人たちが目立ちやすいのです。

そういう人が放つ光に隠れて、影となったところにも多くの味わい深いミュージシャンがいたことを忘れてはいけないように思います。

こういうあまり構えないで気軽に聞ける何気ない良さを持った人が、その53年ぐらいから10年あまりのモダンジャズ黄金時代に、層の厚みを加えていました。

ケニー・ドーハムの演奏を高く評価した日本人的な感覚を、私はなかなか大したものだと思っています。

やはり最後までこの人のプレイをうまく説明できなかった感じは残りますが、聞いてみて頂ければご理解頂けるのではないかと思います。

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静かなるケニー

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