「私生活の緊張感が音楽に良い影響をもたらして深みが増した時期の傑作」
今回はレニー・クラヴィッツ「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」「ホワット・ゴウズ・アラウンド・カムズ・アラウンド」(Album『ママ・セッド』)をご紹介します。
╂ 本日のおすすめ!(Today’s Selection) ╂
■アーティスト名:Lenny Kravitz
■アーティスト名カナ:レニー・クラヴィッツ
■曲名:It Ain’t Over ‘Til It’s Over、What Goes Around Comes Around
■曲名邦題:イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー、ホワット・ゴウズ・アラウンド・カムズ・アラウンド
■アルバム名:Mama Said
■アルバム名邦題:ママ・セッド
■動画リンク:「It Ain’t Over ‘Til It’s Over」「What Goes Around Comes Around」
╂ 名曲レビューでは四つ星半以上のとびっきりの名曲だけをおすすめしています!╂
レニー・クラヴィッツ「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」「ホワット・ゴウズ・アラウンド・カムズ・アラウンド」(アルバム:ママ・セッド)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
今回はご存知レニー・クラヴィッツです。
この人がデビューした時は、ロッキング・オンなどの音楽雑誌で大きく取り上げられていたような気がします。
今では良いと思う曲もありますが、その頃私はもっと尖った音楽を中心に聞いていましたから、デビュー作にはあまり良い印象を持ちませんでした。
その後私はこの2枚目あたりから、ただ事ではないと思い始めました。
このアルバムでは今回ご紹介した2曲だけでなく、最後まで迷った「オールウェイズ・オン・ザ・ラン(Always on the Run)」なんかも最高です。
もったいないので「オールウェイズ・オン・ザ・ラン」もご紹介しておきましょう。
Lenny Kravitz「Always on the Run」
ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)のスラッシュ(Slash)のギターがすごすぎますね。
ただこのアルバムには一つ注文があります。今回ご紹介した2曲はどちらも、邦題がとても長いです。
1970年代の洋楽では、よくレコード会社の担当者が頭をひねって邦題を付けていました。
時々力技すぎて大外れすることもありましたが、あれはとてもいい文化だったと思います。最近は邦題自体を付けないことも増えていますよね。
今回ご紹介する曲も、何か気が利いた邦題を付けてほしかったなと思います。
残念ですが、それならばと私が考えてみましょう。
原題:It Ain’t Over ‘Til It’s Over
直訳:完全に終わってしまうまでは本当の終わりではない
私案:まだ終わってはいないさ
原題:What Goes Around Comes Around
直訳:自業自得
私案:自業自得の世界
うーむ。ボブ・ディランとローリング・ストーンズを意識してタイトルを付けてみましたが、かなりイマイチですね。
まあレコード会社の宣伝担当者の苦労が分かっただけでも良しとしましょう。
ただこの2曲のタイトルを見ただけでも、何か悩んでいるような気がしないでしょうか。
実際に歌詞を一通り読んでみたところ、負の感情7割、正の感情3割といったところです。
では当時のレニーは、どういうトラブルを抱えていたのでしょうか。
このアルバムの頃、レニーは離婚危機にあった
当時レニー・クラヴィッツは、女優として有名なリサ・ボネット(Lisa Bonet)と結婚していました。
2人はアフリカ系アメリカ人とユダヤ系アメリカ人の両親から生まれたというバックグラウンドが同じだったせいか、1985年に付き合い始めるとすぐ、1987年に結婚しています。
レニーがレット・ラヴ・ルール(Let Love Rule)でデビューする2年前です。
当時リサ・ボネットはアラン・パーカー(Alan Parker)監督の「エンゼル・ハート(Angel Heart)」に重要な役どころで出演し、女優としての実績を築きつつある時期でした。
一方でレニーはデビューしようと奔走していた頃で、この頃は格差婚だったようです。
遅れて1989年にレニーがデビューすると、とても大きな話題を呼びました。デビュー作でリサ・ボネットは、2曲で作詞を手がけています。
セールス的には大ヒットとはいえないものの、才能を高く評価されて、次作に繋げられるセールスを獲得しました。
しかしこのセカンドアルバムの頃には、既にすれ違いが多くなってきていたようです。
「ザ・ディフェレンス・イズ・ホワイ(The Difference Is Why)」という曲では、以下のような歌詞があります。
天秤というのは時々バランスを崩すものだ
お前にはその理由が分からないのだろう
その違いが理由だっていうのにLenny Kravitz – The Difference Is Why Lyrics | Genius Lyrics
今回ご紹介する「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」でも、こんなことが歌われています。
何年もの間いろいろ試したさ
俺たちの愛が生き続けられるように
しかし本当に終わってしまうまでは、終わりじゃないのさLenny Kravitz – It Ain’t Over ’Til It’s Over Lyrics | Genius Lyrics
レニー2人の終わりが近いことを予感していますが、この時期はまだ決定的な別れにはなっていないようです。
このアルバム後にどうなったか
しかし翌年1992年にレニーに転機が訪れます。
ヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)との出会いです。
ウィキペディアにはヴァネッサ・パラディとの間で交際の噂があったと書かれていますが、実際に交際していたはずです。
日本の写真週刊誌にも浜辺で二人が裸で過ごしている写真をすっぱ抜かれていましたし、こんな写真もありますからね。
画像は以下のサイトより引用
https://www.bukowskis.com/en/auctions/570/159-patrik-andersson-lenny-kravitz-och-vanessa-paradis
噂どころか、むしろ分かりやすくべったりと交際していたはずです。
結果として、1993年にリサ・ボネットと離婚することになりますが、その後レニーはヴァネッサと別れたみたいです。
ここだけで終わればレニーがひどい奴だったみたいですが、リサ・ボネットも幸せをつかんでいます。
リサはその後ジェイソン・モモア(Jason Momoa)という売れっ子俳優に求愛されて、事実婚の後に結婚しています。
ジェイソン・モモアはリサ・ボネットの12歳年下ですが、ジェイソンが8歳の時にテレビに出ていたリサ・モネットを見て一目ぼれし、ようやく夢を叶えたのだとか。
更にジェイソンはリサの前夫であるレニーに対して、お揃いの指輪を贈ったというほほえましいエピソードもあります。
現在ではリサ・ボネットとレニー・クラヴィッツも、良い関係に戻っているみたいですけどね。
セレブの恋愛というものはよく分かりません。
唯一分かったのはジェイソン・モモアが一途で良い奴だということぐらいです。
この曲のどこがすばらしいのか
さて曲を聞いていきましょう。
まず「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」は、ドラムロールの後に入るキレのあるストリングスがすばらしいですね。
この曲はベースが心臓に悪いぐらいの出来です。私はこういうゴリゴリしたベースが大好物です。
ベースの音をよく聞きたい人は、ヘッドホンを推奨いたします。
レニーのファルセットボーカルは、時に地声を交えているのが効果的です。
曲の中盤で入るクリアーなトーンのギターもいい演奏です。
ああしかし、この曲の聞きどころはやはりベースです。後半に音が少しうわずるベースラインには、簡単に心を奪われてしまいます。
2曲目の「ホワット・ゴウズ・アラウンド・カムズ・アラウンド」は、モロにカーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)といった感じです。
しかしモノマネっぽくなってはいません。カーティスの曲と同じ深みが感じられます。
このニューソウルっぽいひんやりしたエレピがたまりません。
ホーンの使い方はスライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & the Family Stone)のような、少しオフ気味な使い方です。
後半のサックスも、モード風でクールな演奏でとてもかっこいいです。
このアルバムはプロデュースもレニー本人ですが、やはり音楽的な才能は疑いようがありません。
レニーが敬愛するジョン・レノン(John Lennon)は、とても音楽的才能があった人ですが、常に精神性が音楽を上回っていたような気がします。
レニーは精神性よりも、音楽性の方が勝ってしまう人のように思います。
ただこの時は私生活のトラブルが音楽に緊張感を加え、精神と音楽のバランスがとれて、音楽の質そのものを向上させていたような気がします。
その後も才能がある人だけに、全くつまらないアルバムは出していませんが、少なくともこれと次作は本物の音楽を聞かせてくれたと思います。
引き続きこのアルバムのAmazonレビューを読んでみたい方や、ご購入をお考えの方は、下のリンクからお進みください。