「『ジョンの魂』ならぬ『清志郎の魂』とでもいえそうな励まされる曲」
今回はRCサクセション「Oh! Baby」(Album『OK』)をご紹介します。
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■アーティスト名:RCサクセション
■アーティスト名英語表記:RC SUCCESSION
■曲名:Oh! Baby
■アルバム名:OK
■動画リンク:RCサクセション「Oh! Baby」
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RCサクセション「Oh! Baby」(アルバム:OK)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
よく本田圭佑について言われる言葉で、「持っている」という言葉があります。
このバンドはつくづく「持ってい」るバンドなんだと思います。
この人たちのアルバムは、たとえ名盤と呼ばれているアルバムでさえ捨て曲が必ずあるし、しかも少なからずあったりします。
ファンの人には申し訳ありませんが、私はそう思います。
しかし私はこの人たちのアルバムをほとんど持っています。
良い曲が必ず入っているせいもありますが、たとえどんなに出来が落ちる曲であっても、全然つまらない曲と言い切ってしまえないようなところがるように思います。
彼らはサッカー選手で言うと、消えている時間が多くても必ずゴールを決める、そういう種類の選手だと思います。
でも消えている時間はゴールを決めるまでの伏線みたいなものだし、消えている時間でも時々危険な選手であるというところをふとした瞬間に見せてくれる、このバンドはそういうバンドです。
ゴールを決めた時に「あれほど俺から目を離すなよって言っただろう」とディフェンダーに言いそうです。
今この人たちのファッションやイメージは、今から見るとありふれたロックのステレオタイプのように見えるかもしれません。
いま時の小綺麗でセンスの良いバンドを聞いている人にとっては、古くさいと感じてもおかしくありません。
では彼らがいかにもロックな装飾を取り払った時にどうなるか、それがこの曲です。
派手な衣装をすべて脱ぎ捨てた後に現れる、生身の身体みたいな曲です。
この曲のどこがすばらしいのか
さて曲を聞いていきましょう。
イントロは少しセンチメンタルなコーラスで始まります。
出だしの歌詞は「一緒に暮らそう」と直球です。
「この声に注目です」と私が指摘しなくても、なによりも声が先に耳に飛び込んでくると思います。
この曲は清志郎の歌を聞く曲です。
演奏はシンプルで余計な味付けを加えていません。
良い曲だから余分な装飾は必要ないと判断したのかもしれません。
歌の感触がどこか生々しいと感じた人もいるかもしれません。
ウィキペディアの記載を元にアルバムの背景を説明したいと思います。
この時忌野清志郎はどん底だった
このアルバムの大半の曲を忌野清志郎が書いていますが、この時彼は最悪の状態だったようです。
このアルバムのレコーディング中、清志郎は極度の体調不良になり検査したところ、医者から一生治らないと言われるほどの肝臓疾患が判明したそうです。
この時清志郎はまだ31歳か32歳です。
またこの数年前から清志郎の母親が入院していて、このレコーディング時は意識のない状態でした。
その上その後結婚することになりますが、当時付き合っていた恋人の父親がレコーディングの最中に亡くなっています。
自分も最悪の状態なのに、悲しむ恋人を励ましたことでしょう。
つまり母親が意識不明の状態、恋人の親が亡くなり、自分も極度の体調不良と大病が判明したという状態です。
まさしくどん底です。
それにも関わらずライブやレコーディングでハードワークを強いられていました。
ちなみにこのアルバムの発売は前作との発売間隔が8か月と少しですからね。
自分たちのペースであろうはずがありません。相当忙しかったと思います。
そのせいかこのアルバムには「うんざり」というタイトルの曲も含まれています。
「ドカドカうるさいR&Rバンド」では「子供だましのモンキービジネス(モンキービジネス)よってたかって分け前をあさる(あさる)」などという歌詞もあって、バンドを取り巻く周囲への不信感もうかがえます。
しかし一方でほんの少しではありますが、一筋の光も差し込みました。
この録音が行われたハワイのスタジオでは機材に恵まれていて、清志郎の声が生っぽく録音できました。
それが極限状態に置かれた清志郎のリアルな声を忠実に再現できるようにしたのです。
その声の生々しさがこの曲の良さを一段と引き立てました。
バンドの他のメンバーには申し訳ありませんが、このアルバムは「ジョンの魂」ならぬ「清志郎の魂」とでも呼べるアルバムかもしれません。
ロック嫌いな人にこそ聞いてほしい曲
最近はロックを聞く人が減っています。
先に述べた通り今の若者からするとロックとは特に昔のものは古くさくて、もしかしたらカッコ悪いと思っている人すらいるかもしれません。
この曲は自分の人生にロックは必要ないと思っている人にこそ聞いてほしい音楽です。
試しに聞くと「バカみたい、バカだな、バカでしかない、、、、、あれ、ちょっと待てよ、何だろうこの感じは」という少女漫画的展開になるかもしれません。
この曲はバラードだけどロックそのものです。ロックというものは、時にリアルな感情を切り取って見せてくれる一面があります。
不思議とそのリアルさに触れていたいと思うことがあるものです。
このバンドの装飾をすべて取り去って残ったコアの部分にはそれがあると思います。
それが「持っている」ということなのかもしれません。
最後にこの曲で私が好きな歌詞の一部を引用しましょう。
子供たちがきみのうわさをしているよ。
ぼくはそいつをNOTEに書きとめ
もうすぐ新しい歌ができ上がるはずさ
5月にはきっときみに贈るだろう Oh!Baby
RCサクセション Oh! BABY 歌詞 – J-Lyric.net
ちなみにアルバムに先行して発売されたこの曲の発売日は6月1日ですから、少し間に合いませんでしたけどね。
たわいない歌詞かもしれませんが、不思議と沁みます。
私は父親を亡くしたばかりの恋人を励ました曲ではないかと思っています。
この曲は辛い思いをしている人にとって励まされる曲かもしれません。
そもそもこのアルバムは「OK」というタイトルですしね。
清志郎は恋人を励ます曲を書いて歌うことで、なんとか自分のメンタルをも維持していたのではないでしょうか。
やはりこの人はどうしようもなくロック・ミュージシャンだったのだなと思います。
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