「ラヴァーズ・ロックというものを知り尽くしたサンドラ・クロスの初期の名曲」
今回はサンドラ・クロス「ユーアー・ライイン」(Album『カントリー・ライフ』)をご紹介します。
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■アーティスト名:Sandra Cross
■アーティスト名カナ:サンドラ・クロス
■曲名:You’re Lying
■曲名邦題:ユーアー・ライイング
■アルバム名:Country Life
■アルバム名邦題:カントリー・ライフ
■動画リンク:Sandra Cross「You’re Lying」
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サンドラ・クロス「ユーアー・ライイング」(アルバム:カントリー・ライフ)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
今回は夏にぴったりのラヴァーズロックの曲を取り上げます。
サンドラ・クロスといえば、ラヴァーズロックの代表的シンガーの1人で、日本でも人気の高い人です。
まずは彼女の経歴について書きましょう。
彼女はサウスロンドン、つまりイギリス出身の女性です。7人兄弟の中で唯一の女の子として生まれたんだそうです。
両親はジャマイカ移民で、7歳から聖歌隊で歌い始め、9歳にはそこでリードボーカルを務めていました。
14歳になると彼女は友達と一緒にラブ&ユニティ(Love & Unity)を結成して、タレントコンテストで賞を受賞した後、初めてのレコーディングを経験しています。
その曲のリンクを貼っておきましょう。この曲は今回取り上げた曲と同等の価値がある完璧なラヴァーズロックです。
ちなみにこの曲はサンドラ・クロスが書いた曲ですから、14歳の時点で彼女がいかに完成されていたかが分かります。
早熟だったのですね。
この曲はStudio 76 Recordsというラヴァーズものを得意とするレーベルからリリースされ、1979年に4週間連続で英国レゲエチャート1位を記録しています。
後に彼女はマッドプロフェッサーの下でヒット作を連発しますが、その前にはもうスターだったのですね。
ちなみに彼女はヒットしてから学校に通うのを拒否して不登校となり、そのままなし崩し的に音楽のキャリアを歩み始めています。
アリワ・サウンズ(Ariwa Sounds)に移籍してから、このアルバムで彼女が熱望していたソロデビューを果たしています。
ラヴァーズロック(Lovers Rock)という音楽について
ここまでラヴァーズロックという言葉を当たり前のように使っていたので、改めてラヴァーズロックとは何かについてご説明しておきたいと思います。
ラヴァーズロックとはレゲエのサブジャンルの1つです。
ウィキペディアで改めてラヴァーズロックの定義を確認したところ、以下のような記述がありました。
最初のラヴァーズ・ロック楽曲と認識されているのは1975年、ルイーザ・マークが14歳の時に発表したロバート・パーカー「I Caught You In A Lie」のカバーである[4]。
その他の最初期のラヴァーズ・ロック楽曲はジンジャー・ウィリアムスの「Tenderness」、T・T・ロスの「Last Date」である[4]。
上に登場する曲のリンクも貼っておきましょう。
Robert Parker「I Caught You In A Lie」
初期の頃から甘さのあるレゲエだったことを再確認しました。
おおまかにいうと、ラヴァーズロックはレゲエのリズムに乗っかった、主に恋愛のことを歌った甘めの歌のことですから、ここからがラヴァーズロックという定義は本来難しいと思います。
ジャマイカの歌手はかなり昔から、甘い時はとことん甘く歌いますからね。
ただウィキペディアの定義を見ると、始まった時期がきちんと定義されているようです。
1970年代中期のロンドンで誕生した[1]。
個人的にはロンドンで誕生したというところが興味深いです。この頃はサンドラ・クロスもロンドンで歌っていたはずです。
この曲のどこがすばらしいのか
さて曲を聞いていきましょう。
イントロからベースラインがかっこよすぎます。
ラヴァーズロックといってもレゲエの醍醐味であるリズムの面白さが詰まった曲です。
この曲でもサンドラ・クロスのボーカルが、とても気持ちよさそうに歌っています。
サンドラ・クロスはキューティーな高音が魅力の人ですが、人工的な感じがせず、オーガニックなところが持ち味の人です。
トラックは全体に軽めですが、これはマッド・プロフェッサーの音づくりの特徴です。
軽いし、音ににごりみたいなものを感じません。
しかしこの曲の特に後半は、様々なアイデアを盛り込んでいます。
彼は名前の通り、自分名義のアルバムではマッドともいえる万華鏡のようなサウンドを聞かせてくれます。
この曲でも後半に少しその片鱗を聞かせてくれます。
ここでは全体に音数を多くしたり音を分厚くしすぎず、キラキラして涼しげなサウンドに仕上げています。
サンドラ・クロスの透明感のある高音を反響し合うキーボードを効果的に入れて、中音域の音を省略して、ゴリゴリうねるベースラインの低音と高音を対比させています。
この曲が示すように、2人の出会いはどちらにとっても、すばらしいものとなりました。
マッド・プロフェッサーはここでつかんだ方法論を、他のラヴァーズロックのアーティストにも応用しはじめました。
このあたりからアリワの全盛期が始まります。
サンドラ・クロスとマッド・プロフェッサーのコンビでは、ワイルドバンチ(The Wild Bunch)名義のものを含めて、6枚ものアルバムを発表しています。
1986年から1991年の間、6年連続でBBCリスナーの「イギリスのベスト女性レゲエシンガー」の称号を獲得して、彼女は一躍アリワレーベルの看板的存在になりました。
軽視されがちなサンドラ・クロスの才能について
このアルバムではよくプロデューサーのマッド・プロフェッサー(Mad Professor)の功績ばかり言及されがちです。
もちろん彼が才能あるサウンド・クリエイターであることは間違いありません。
しかし先程取り上げたように、ラブ&ユニティは1979年のヒットですから、サンドラ・クロスはラヴァーズロックというジャンルが活発化する初期の頃には、もう既に活躍していたということになります。
そしてこのアルバムがヒットしたことによって、彼女はキャリアを更に前進させました。
このアルバムではスタイリスティックス(The Stylistics)のカントリー・リヴィング(Country Living)のカバー曲が有名です。
一応このアルバムを代表する曲なので、リンクを貼っておきましょう。
この曲はかなりヒットしたようですが、私は「ユーアー・ライイング」が好みです。皆さんはどちらがお好みでしょうか。
たしか「ユーアー・ライイン」の方もシングルカットされていたはずですが、若干「カントリー・リヴィング」のヒットの影に隠れた感じもします。
14歳でヒット曲を書いた実績を持つサンドラですが、この曲も彼女自身の手によるものです。
ラヴァーズロックについては、ひょっとしたらマッド・プロフェッサーよりも、サンドラ・クロスの方がよく知っていたかもしれません。
私はサンドラ・クロスがマッド・プロフェッサーの歌姫の1人ではなく、彼女単体で才能あるミュージシャンだと思っています。
その証明として、マッド・プロフェッサーの下を離れた後、彼女は最も充実した時期を迎えています。
いずれその時期の曲も取り上げてみたいと思っていますが、今回は彼女の原点となる時期に焦点を当ててみました。
この曲を聞いてこの暑い時期を乗り切っていただければと思います。
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