「村上春樹が本のタイトルにしたのもうなづける名演奏」
今回はソニー・ロリンズ「オン・ア・スロー・ボート・トゥ・チャイナ」(Album『ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット』)をご紹介します。
╂ 本日のおすすめ!(Today’s Selection) ╂
■アーティスト名:Sonny Rollins
■アーティスト名カナ:ソニー・ロリンズ
■曲名:On a Slow Boat to China
■曲名邦題:オン・ア・スロー・ボート・トゥ・チャイナ
■アルバム名:Sonny Rollins with M.J.Q
■アルバム名邦題:ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット
■動画リンク:Sonny Rollins「On a Slow Boat to China」
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ソニー・ロリンズ「オン・ア・スロー・ボート・トゥ・チャイナ」(アルバム:ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
この曲は村上春樹の「中国行きのスロウ・ボート」という本のタイトルになっていることで有名です。
村上春樹によればこの曲が大好きだから本のタイトルにしただけで、それ以外の意味は特にないとのことです。
村上春樹はジャズ喫茶を経営していたのは有名な話です。
つまりプロとしてジャズを聞いていた彼が小説のタイトルにしたいと思うぐらいの演奏だということです。
確かにこれは相当の名曲です。
後にソニー・ロリンズはジャズ・ジャイアントと昇りつめていくのですが、この曲が録音された1951年はまだいい駆け出しの時期でした。
しかし堂々とした演奏で全然そう感じさせません。
この曲はこう吹くんだという確信に満ちた演奏です。
この曲はロリンズのこの決定的な名演の後に色々な人が演奏するようになりました。
その後の人もほとんど同じ解釈で吹くか、あえて違う解釈にするかというある種踏み絵になっています。
ジャズ畑の人が「枯葉(Autumn Leaves)」を演奏する時にマイルス・デイビス(Miles Davis)の演奏を意識するのと同じです。
念の為、ソニー・ロリンズのご紹介をしておくと、この人はジャズテナーサックス奏者で、おおからで男性的なトーンやユーモラスでどんなに早いテンポの曲でもゆったり乗っているような余裕があるという人です。
私がジャズテナーで一番好きな人かもしれません。
まず出だしから飛び出すかのようにテナーで歌い始めます。まさしく待ちきれないと言わんばかりの始まり方です。
テーマの吹き方は既にロリンズ節を確立しています。フレーズを伸び縮みさせて、独特の味わいを出しています。
ピアノのケニー・ドリュー(Kenny Drew)も端正で転がるようなピアノ演奏をしています。
ドラムはロリンズと相性のいいアート・ブレイキー(Art Blakey)で、新米のロリンズを鼓舞するかのような演奏をしています。
この曲はこの演奏の3年前の1948年にヒットした当時の流行歌です。
ここでのロリンズは3年前のヒット曲を取り上げた駆け出しのテナーサックス奏者という立場での演奏です。
しかしこんな演奏ができるのだから、この時点でロリンズも自分の才能を確信していたでしょう。
どう考えても彼には明るい未来が待ち受けているだろうという状況です。
この曲からそういう前向きで明るい雰囲気を感じ取って頂ければと思います。
だってアメリカから中国にゆっくりとボートで向かうなんて、楽観的じゃないとやっていけないですからね。
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