「世界中のトラック運転手のハートを射止めた男くさい最強のドライバーズミュージック」
今回は男くさい音楽をご紹介します。
MTV全盛時代に異彩を放ったむさくるしいルックスの男たちによるハードブギーの曲です。
彼らの音楽は、ある特定の層に強くアピールしました。
それはトラックドライバーなどの職業運転手です。
その特殊性ゆえに、このアルバムはとても特異な売れ方をしています。
今回はこのアルバムの特殊性について書きたいと思います。
本日のおすすめ!(Today’s Selection)
■アーティスト名:ZZ Top
■アーティスト名カナ:ZZトップ
■曲名:Got Me Under Pressure
■曲名邦題:アンダー・プレッシャー
■アルバム名:Eliminator
■アルバム名邦題:イリミネイター
■動画リンク:「Got Me Under Pressure」
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ZZトップ「アンダー・プレッシャー」(アルバム:イリミネイター)ディスクレビュー
こんにちは。おとましぐらです。(プロフィールページへ)
このバンドは1970年に結成されたテキサスのロックバンドです。
このアルバムは1983年に発売された通算8枚目で、1996年にアメリカ国内で1000万枚を超えたそうです。
13年もかけてようやくと思うかもしれません。
確かにこのアルバムは売れ方が特殊です。まず特徴その1は、極端なロングセラーであるということです。
ウィキペディアから引用しておきましょう。
全英アルバムチャートでは初のトップ10入りを果たして最高3位に達し、139週チャート・インするロング・ヒットとなった[1]。
ニュージーランドのアルバム・チャートでは初登場33位だったが、長期にわたって売り上げを伸ばし、リリースから1年以上後の1984年12月には2週連続で4位を記録した[3]。
移り変わりの激し全英チャートで、2年半以上もチャートインしていたとは驚きです。
確か本国アメリカではそれ以上に、ずっとアルバムチャートの上位にどっしりと鎮座していました。
ロングセラーになる要因はいくつかあります。
大量の宣伝費を投入してロングセラーをつくり出すのは、できないわけではありませんが、一般的に難しいと言われています。
私は普段興味が薄い層に口コミで伝播して売れたと推測しています。
テーマは自動車愛
このアルバムの売れ方の特徴その2は、カセットテープで売れた割合がとても大きいということです。
一説によると、カセットテープの売上がレコードの売上を上回ったのだとか。普通はカセットの割合はごくわずかです。
カセットテープで売れたということは、車で聞かれたということです。
当時の自動車は、ラジオとカセットテープぐらいでしか、音楽を聞くことができませんでした。
しかもトラックドライバーに売れたようです。彼らのライブ会場には、大型トラックが集まることで有名です。
このアルバムでも車が大きくアピールされています。
ちなみにジャケットは、車マニアで有名なビリー・ギボンズ(Billy Gibbons)が所有している、1933年製のフォード・クーペです。
フロントだけでは分からないので、同じような色の写真を探してみました。
この車はクーペなので2ドアです。
ファミリーカーではない、純粋にドライブを楽しむための自動車だといえるでしょう。
ジャケットから想像されるような威圧感のあるような大きさではありませんが、威風堂々とした姿をしています。
アルバムタイトルの「Eliminator」は、様々な解釈ができる言葉です。
私なりの解釈では「他の車が道を譲るぐらいの存在感」みたいな意味だと思います。
この曲のどこがすばらしいか
さて曲を聞いていきましょう。
しかしビリー・ギボンズのギターはすばらしいです。
ビリー・ギボンズはブルースコレクターとしても知られていますが、演奏にブルースが感じられます。
ブルースにはこういうカラっと乾いたタイプのものがあります。
スティーヴィー・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan)も、タイプこそ違えど、乾いたブルースギターを演奏することがありましたね。
私はこの人のギターが大好きで、時々無性に彼のギターを聞きたくて、ZZトップのアルバムを取り出すことがあります。
ビリーはリズム感が抜群ですし、少しトリッキーなピッキング・ハーモニクスを多用したギターは、本当に言葉がありません。
この曲でのギターのドライブ感はいかがでしょうか。ザックザックしたリフがかっこいいです。
ミディアムテンポで、どっしり構えて、ギターがバンドをドライブさせています。
シンセサイザーとシーケンサーの導入
このアルバムでは、初めて彼らがシンセサイザーとシーケンサーを取り入れたことで有名です。
しかしそれ以前からポップ路線に舵を切ってサウンドが変化していたので、私はこのアルバムで突然変わったという風には思いませんでした。
このアルバムの特徴は、腰を据えてブギーをやっていることです。
前作も悪くありませんが、少しポップすぎたと思います。
一方このアルバムでは、ぐいぐい来る最強のブギーナンバーばかりです。
まるでどこからでもホームランが出そうなバッターがそろった野球チームみたいです。
このアルバムからバンドは一般的な人気を獲得しました。
この後「アフターバーナー(Afterburner)」という更にデジタル路線を進めたアルバムをリリースしていますが、昔からのファンが離れたという話は聞きません。
不思議と彼らの良さである、ノリの良いブギーバンドとしての良さが、失われていないからだと思われます。
ザ・フーやヴァン・ヘイレンにも言えることですが、シンセを入れて更に強力なロックサウンドになった感すらします。
この曲を聞いていると、細かいことはいいから、どんどん前に行こうという気にさせられます。
ドライバーを夢中にさせた推進力が魅力の音楽です。