まず最初にあるバズったツイートをご紹介します。
今回の記事では、そのツイートを見て私が感じたことを書いてみたいと思います。
最初にこの記事を書くきっかけを与えてくれたツイートをご紹介しましょう。
あるバズったツイート
「日本の音楽は世界を相手にしていない。ガラパゴス」
「アイドル文化なんてあるのは日本だけ。あんなものはロリコン!」
「日本のアニメがすごいなんていうのはオタクだけ」といわれてた三つの要素を合わせたyoasobiの『アイドル』がビルドボードとyoutubeで世界一位獲得してるのマジですごいわ。
— 織部ゆたか (@iiduna_yutaka) July 28, 2023
ビルボードではなくビルボード・グローバルだった
上のツイートはかなりバズっているようです。
そこでこの機会に自分の考えをまとめてみることにしました。
最初にビルボードで1位になったとツイートされている、その曲をご紹介しておきましょう。
最初に注意点を書いておきたいと思います。
上のツイートにはビルボードとありますが、YOASOBIが1位を獲得したのはビルボード・グローバルの方です。
ビルボード・グローバルとは、ざっくり言うとアメリカを除いた世界のヒットチャートのこと。
つまりビルボード総合チャートの1位ではありません。
アカデミー外国語映画賞を受賞したことを、アカデミー賞を受賞したと言うようなものです。
上のツイートはその点を誤解させてしまうかもしれません。
快挙の要因
ビルボードのチャートは様々な指標から決められていますが、CDの売り上げ枚数はその一部にすぎません。
ただそれでも指標の1つです。
日本は世界の中でもCDの購入者の比率が大きいことで知られていますが、YOASOBIの曲はオリコンチャートで1位を記録しています。
CDが売れない国が多数を占める中で、まだ多少はCDが売れる日本は加点要素となりやすい。
つまりCD売り上げも指標に含まれるということは、日本のアーティストにとって優位になります。
加えてYoutubeの視聴回数など、利用者の懐が痛まない行動もカウントされています。
その点YOASOBIのこの曲は、公式動画が現時点で2.6億回再生されています。
その意味でこの曲はビルボード・グローバルで1位を記録してもおかしくはありません。
ただこの快挙を考える上で、ビルボードの存在意義が低下していることを考慮する必要があります。
ビルボード総合チャートの現状
私は時々チャートをチェックしています。
普段ヒットチャートを見ていない方は、以下からご覧ください。
https://www.billboard.com/charts/hot-100/
現在のヒットチャートを見て、いかが思われるでしょうか。
まずテイラー・スウィフト(Taylor Swift)など、なじみの名前が多いこと。
そして知らない人の曲を聞いても、とび抜けた個性を感じる曲が少ないかもしれません。
どことなく行き詰っている印象を受けます。
これがビルボードの総合チャート、つまり世界標準の現実です。
今でもヒットチャートに熱い視線を向ける人も、以前と比べ少なくなっているような気がします。
ビルボードの総合チャートですら、アメリカという国のガラパゴスなのかもしれません。
それは大晦日の紅白歌合戦の地盤低下と似ています。
近年の紅白は視聴率の下落傾向に歯止めがかからず、出場者のハク付けとしても魅力的ではなくなっています。
ビルボード攻略のハードルは下がっている
ここまで少し辛口で水を差すようなことを書きました。
しかしそれは冷静に現状を把握するため。
それでも今回のYOASOBIの件は、喜ばしい快挙であることには変わりありません。
むしろそういう現状をふまえた時、今回のYOASOBIのヒットはより重要度を増しているように思います。
それはどういうことでしょうか。
ビルボードは紅白と同じように存在意義が低下しつつあるとはいえ、一定の権威が残っています。
しかしそこで評価されるハードルは確実に下がっています。
私はそこが狙い目だと思っています。
そのギャップを突いて、日本の音楽が世界に普及する契機に繋げられないでしょうか。
韓国のグループが紅白に出場していることについて
近年日本の紅白に韓国の人気グループが出場しています。
その背景には、日本の人気アーティストが出場を希望しなくなったこと、そして日本の人気グループの絶対数が少なくなったことが関係しています。
逆に言えば日本の人気アーティストが多くて出場希望者が多ければ、他国のグループが出場する枠はなくなります。
しかしそれでも韓国のグループは出場を希望しています。
おそらくそれはマーケティング上で有利との判断が働いていると思われます。
日本も韓国も「出場したい/したくない」と「メリット/デメリット」を天秤にかけています。
韓国のグループは日本という他国のマーケットで認知されるため、紅白に出た方が良いと判断したのでしょう。
このハングリーさは、日本も見習うべきかもしれません。
これまで日本のアーティストが世界で評価されたルートについて
これまで日本の音楽は世界で評価されなかったわけではありません。
X Japan、LOUDNESS、BABYMETAL、その他普通の日本人が知らないようなバンドまで、世界でライブをしていたりします。
それはつまり、彼らには需要があるということ。
おそらく海外のファンからしたら、日本のバンドだから好きになったのではありません。
良いと思ったバンドが、たまたま日本のバンドだったというだけです。
日本人だって、アイスランドのバンドだからシガー・ロス(Sigur Ros)を好きになったわけではないと思いますし。
つまり個々の独自性によって一本釣りされたようなもの。
これまで日本のバンドが売れるのは、このルートが多かったように思います。
彼らは個の単位で世界に認めさせてきました。
今回は違うルートを開拓したかもしれない
しかし今回のYOASOBIのヒットは、そのパターンとは異なります。
YOASOBIは、J-POPに分類されると思います。
どちらかというと冒頭でやゆされていたガラパゴスと呼ばれがちな音楽です。
それが今回ビルボード・グローバルで1位を記録しました。
YOASOBIの音楽は、タイアップやコラボを基本としてます。
つまり最初から日本人の多くに認知され、好感を持たれるように音楽を設計しています。
当然その音楽は普通の日本人の好みを反映したものになります。
もしかしたらYOASOBIは究極のガラパゴスといえる音楽かもしれません。
しかしその分国内では個性的でなくなることも少なくありません。
グローバル基準でガラパゴスは個性となるかも
日本で純粋培養された音楽は、勤勉な日本人の気質ゆえか、少なくとも国内では通用する音楽となりました。
それらの多くは個性的ではないにしても、全体として見れば日本という国の個性といえるかもしれません。
確かにその個性は海外から見たら、違和感を覚えるところが多々あるかもしれません。
ただ私はビルボードの上位の音楽に対して、満足していない層が一定数いるように思います。
その変わり映えしない現状を鑑みると、ビルボード上位にあるグローバルな価値観を反映している音楽と比較した場合、比較優位となる可能性が出てきます。
ガラパゴスの音楽が日本らしいという個性が付与され、ポジティヴな評価を得る可能性もあります。
現にアニメは個々の作品だけでなく、日本のアニメというカテゴリーとして確固たる評価を得ています。
ガラパゴスとは日本ローカルの個性だとしたら、YOASOBIのヒットは今後日本の音楽が世界で普及する上で有利に働くかもしれません。
中間まとめ
日本の音楽が世界で評価されるには、現在2つのルートがあります。
1つは従来通りの方法。つまり実力と個性が認められて、単独で評価されること。
もう2つはまだ可能性にすぎませんが、日本のガラパゴスの音楽の代表として認知されること。
2つ目のルートで海外進出する場合は、国内のガラパゴスの競争を勝ち抜かなければいけません。
ガラパゴスにはガラパゴスなりの熾烈な競争があります。
YOASOBIはその過酷な競争を勝ち抜いた存在。
だからこそ今回のヒットにつながったといえるかもしれません。
国内の競争が海外の評価に繋がる可能性について
今回のヒットは国内の競争が、海外での評価に直結する可能性を示しています。
その意味で今回のYOASOBIの快挙は、日本のアーティストに希望を与えました。
それは突出した個性に頼らずとも、品質の高さで勝負できる時代の到来といえるかもしれません。
個性的であることは、とても難しいものです。
しかもそれが競争力として武器になるほどの個性となればなおさらです。
しかしその中には個性的ではなくとも、実力を持った人がいるもの。
今後はガラパゴスの一員であることが対外的には個性と見なされることで、その唯一の弱点を補うことができるかもしれません。
そもそもメイド・イン・ジャパンの製品も、個性ではなく品質の高さが評価されたはず。
ガラパゴスとは、メイド・イン・ジャパンです。
今後ガラパゴスな音楽は、メイド・イン・ジャパンとして団体戦が可能になったかもしれません。
ガラパゴスだとおとしめる人の存在
日本の音楽はガラパゴスなので、世界では通用しないと言っていた人がいるようです。
そう言っている人は、地域ローカルの競争力を磨く場としてのガラパゴスを甘く見ていないでしょうか。
日本というガラパゴスで勝ち抜いたYOASOBIの実力を、不当に低く見積もってはいないでしょうか。
私はそれらの人について、思うことがあります。
それは彼らが普段日本のアイドルやアニソンを聞いているのかということ。
もしかしたら全然聞いていない、もしくはほとんど聞いていないかもしれません。
だからこそ、そんなことが言えるのではないかと思ってしまうのですね。
聞いていたら、そんな風に一括りにした物言いはできないと思いますし。
仮に聞いていてジャンルごと全否定するならば、ただ単にその人は何も分かっていないだけです。
ネガティブな声を乗り越えて、この成功を次に繋げられるか
中には日本の音楽そのものを否定するために、そういうポジションをとっている人もいるような気がします。
そもそも自分がそう思うというだけで、それらの音楽を好む人に向かって、そんなの世界に通用しないと言いに行くものでしょうか。
マウンティングなのかどうか分かりませんが。
無理やり世界標準に合わせる必要はありません。
後はこの成功を突破口にして、海外にチャレンジしてほしいと思います。
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